修学旅行の写真選び。美里は真剣に写真を見つめる秋穂に声をかける。
「何々? 何の写真で悩んでんの?」
「これとこれなんだけど」
秋穂は2枚の写真を指した。
「明治安田生命に送るならどっち?」
「どういう理由で悩んでんのよ」
「まあ、送るやつは後で選ぶとして」
「送るのは前提なの」
「正直自分が写ってるのってあまり上手くとれてないよね」
「まあ。今はスマホで撮れるからわざわざ買わないかな」
「思い出なら記憶に残ってるし」
2人は楽しかった数日間を思い出す。
学校で顔を合わすメンバーと過ごす、いつもと違った場所。友人数人と観光して、お土産を買って、お泊まりではおしゃべりが止まらなかった。
ちょっとした非日常が素敵な思い出となった。
写真もそうだが記憶の中は楽しそうな笑顔にあふれていた。
ら~ら~ら~ らら~ら~
「♪こと~ばに~、できな~い」
「小田和正歌うな」
空の青を隠すように桜の花が咲き誇る。
歩道は薄桃色の絨毯が敷かれ、車が通る度に宙へと舞い上がった。私はその道をにこやかに通っていく。
春だ。春が来た。暖かな、優しい季節が。
私の1番大好きな季節がやってきた。
思わず足取りが軽くなってしまう。
降り注ぐ桜の花びらは私を祝福するかのよう。
暖かな日差しは私に微笑んでいるかのよう。
ずっとずっと会いたかった。
春が来れば会えるってわかってたから、私は待っていられたの。
私は目的地の扉を開ける。
「期間限定の桜餅ください!!!」
高校の入学式の日。私はあなたに恋をした。
それから1年半。誰よりも、ずっとあなたを見つめていた。
あなたがどんな風に笑うのか。
あなたの好きなものはなんなのか。
あなたのことならなんでも知りたくなった。
あなたが困っていると手を差し伸べたくなるの。
そう、これが恋。
「いや、それストーカー」
「世が世ならそうだったかも」
「今の時代がアウトだわ、このバカ」
「坂本くんのことが好きで、止まらなくなっちゃうの」
「いや、相手が気づいてたらドン引き案件だからね」
「大丈夫。私物には手をつけてないもの。坂本くんの使い捨てのつま楊枝なら持っているけど」
「今すぐ捨てろ。大馬鹿野郎」
「ぐすん。捨てなくたっていいじゃない」
「捨てるわ。速攻捨てるに決まってるから。あとヤバイことしてないでしょうね」
「坂本くんが脱いで置いておいた制服のボタンが取れかかってたから直してあげたの」
「普通にホラー案件」
「ホラーじゃないもん。置き手紙に『ボタンつけました byこびとさん』て書いたから、こびと案件だもん」
「そんな案件生み出すな」
「あ、坂本くん」
「なんかボタン触って話してるわね。あんたが気持ち悪いって言ってるんじゃない?」
『気づいたらこびとさんがつけてくれたんだぜ。スゴくね!!』
「坂本アホか!!!!」
なんだかんだ、ずっと何かしら妄想してる。
なんだかんだ、ずっと小説を読んでいる。
なんだかんだ、文章を書くのを再開している。
忙しいくせになんだかんだとやめられない。
飽き性なくせに、誰かのためになるわけでもなく、何の身にもならないものだとわかっていて。
物語を紡ごうとするのを、下手だとわかってて書き続けることを、ずっとずっとやめられない。
これからも、ずっと。
「夕日は沈むもんだろうが! 沈まない夕日があるなら持ってこい!!」
「夏井先生かお前は」