夏が終わって涼しくなり、緑色だった木々の色が褪せる。
枯葉が落ちて落ちて。
寒そうな肌が見えていた冬が終わりを迎えようとしている。
これから春がくるんだ。
愛しい彼女と肌を寄せあっていた季節が終わってしまうのは、少し寂しく感じてしまった。
おわり
六四四、枯葉
お風呂に入った後、ベッドに転がって身体を伸ばす。
なんとも言えない充実感が内側から溢れ出す。
今日は本当に楽しかったぁ……。
気になる彼とふたりでお出かけ。
色々と話して相手を知ることができたから嬉しくて嬉しくて……今もドキドキしてる。
ふう。
深呼吸をして瞳を閉じると、ベッドに身体が沈んで行くのを感じた。
おやすみ、今日。
また明日ね。
おわり
六四三、今日にさよなら
彼女を見ていると口角が上がる。
あまりにも緩い顔になるから表情を隠すのに必死です。
この後、彼女と遊びに行くことになっていて頬が緩みっぱなしなんだ。
ヤバいな、身体が軽いや。
俺、自分が思っているより、ずっと楽しみにしてる。
ただのお気に入りなんだと思っていたけど……違う気持ちが生まれているの……かな。
おわり
六四二、お気に入り
バレンタインの日に恋人から毎年チョコを貰っている。
毎年趣向をこらしてくれていて、地味に楽しみになっていた。
普通のチョコだったり、ホットチョコレートにしてくれたり、工夫してくれている。
そして今年出たのはチョコアイスだった。
「え、これ……」
「懐かしいですよね!?」
そう頬を染めながら眉を八の字にして微笑む。
そう、懐かしいんだ。
「今回は、いーっぱい愛情を込めましたからね!」
「え、もしかして手作り!?」
「はい、手作りです!」
俺は視線をチョコアイスを送って、どうしても懐かしく思う。
まだ友達の時に彼女がくれたのは手作りのチョコアイスだった。
あの時のは俺のためじゃなかったとは思う。
でも手作りで作る、その手間を考えると誰よりも贈る相手を思っていると伝わったんだ。
改めて彼女を見つめると、首をかしげて不安そうに俺を見てくる。
そうだね。
俺は、彼女の相手を思いやるところを好きになったんだ。
誰よりも俺を思ってくれる彼女を好きになったんだよ。
それを思い出しながら彼女の作ってくれたチョコアイスを口に含む。
「ん〜〜〜、おいしーいー」
おわり
六四一、誰よりも
なんか見覚えのある水色の封筒を見つける。
どこから届いたのかも分からないけれど宛先は私になっていた。
送り主は書いていない。
直感で経年劣化をしていると理解してしまった。
そう、記憶していたの。
私は自分の文房具をまとめて収納していたボックスを開ける。
探す必要はない。
だってそれは一番上に置いてあったの。
ううん。
昨日買ってきて、そこに入れたから。
出てきたのは、封を開けていないレターセット。
それと手元にある手紙は間違いなく同じものだ。
手紙を開けて中を確認する。
見覚えのある筆跡は間違いなく私のもので。でも私はこの手紙を書いた記憶はない。
どういうことだろう。
内容に目を向けると涙が溢れる。
たくさんの文章に込められている「私は幸せである想い」。
大切なパートナーと一緒にいる。
大丈夫、独りじゃないよ。
そう背中を押してくれる手紙だった。
最後には十年後の日付と私の名前。
なんて不思議なことが起こったのだろうと首を傾げるんだけれど、こういう不思議が起こることは理解している。
だって本当の私は……。
――
それでもこんな手紙一つで幸せになれるなんて確信は持っていない。
パートナーか、どんな人なんだろう。
そして、未来の私はどんな思いでこの手紙を書いたのだろう。
そう考えながら、この手紙は誰にも見つけられないようにしまっておいた。
未来を自分に託して。
おわり
六四〇、一〇年後の私から届いた手紙