「新しい地図」
久しぶりに友達と遠出をすることになった。
車のカーナビの更新を忘れて出かけてしまい、山奥の分かれ道で迷った。
携帯の電波も圏外で繋がらず、右か左か迷う。
とりあえず、直感で右へ、全く舗装されていないケモノ道を恐る恐る進んでいく。
広い野原が広がった。色とりどりの草花が咲き、まるで絵の中のような景色と出会えた。
「旅に危険はつきものだな。でも、危険の先には絶景が待ってることもあるのか。」
感慨深く景色を眺めながら呟いた。
「伊能忠敬が日本地図を作った時もこんな感じだったのかな?日本の色んな絶景に出会ったんだろうな。羨ましい〜。」
友達が 少しからかうように笑って応えた。
「好きだよ」
「好きだよ。」
「私のこと好き?」って君に聞かれたから答えただけなのに、君は悲しそうな顔をした。
どうしてそんなこと聞いて、そんな態度とるんだろう?もしかして、浮気バレた?
機嫌を取るために、もう1回言ってあげた。
「好きだよ。」
今度は思い切り頬をぶたれた。
"好き"ってよくわかんねぇ。
「桜」
公園の桜の樹の下から白骨化した女性の屍体が発見された。俺は刑事としてその事件に関わった。たまたま防犯カメラに犯行の一部始終が写っており犯人はしばらくして逮捕された。
俺は逮捕された女の取調を任された。
「動機は?どうして桜の樹の下に埋めようとおもった?」
女は焦点の合わない目で嬉々として語り出した。
「あの子は私を散々コケにした。だから殺しちゃった。人間としてはゴミクズだったけど、桜の養分として綺麗に花葬してあげたかったの、刑事さんも見たでしょ?あの桜。他のと比べて花びらの色が赤みがかってて艶があって…一際、綺麗だったわ……。」
「……桜の樹の下には屍体が埋まっている、か。」
ポツリと呟くと、女は目を輝かせた。
「えぇ!そう!それよ!それが現実になった!刑事さんも、私のこの感動わかってくれるかしら?」
恍惚とする女の顔が脳裏に焼きつき、少しだけ彼女に共感してしまった自分にゾッとした。
「君と」
僕は君にとって、良い夫ではなかった。
亭主関白という訳ではなかったが、あまり君を大切にしてあげられなかったと、歳をとった今更後悔しているよ。
仕事を言い訳に君や子供たちにあまり構うことができず、ついに子供たちには見限られ、君が空へ旅立ってからというもの家には誰も寄り付かなくなってしまった。ひとりぼっちだ。
来世、生まれ変わったらまた君と出会って、君と恋愛をして、君と結婚をして、君とたくさんの思い出を作りたい。
僕は地獄に行って修行してくるよ。生まれ変わったら君を迎えにゆくから待っていてくれ。
「空に向かって」
暖かな春の公園。桜は満開に咲き誇っていた。
私は1人芝生にレジャーシートを敷き、仰向けに寝転がった。
自然と空に向かって手を伸ばしていた。
いくら手を伸ばしても届くことがない雄大な空。自分のちっぽけな悩みが春風に攫われて空の彼方へ消えてゆくように感じた。
そんな、とある春の日のできごと。