そして、
それは物語を結末に導く言葉。
「彼は本当に良い人だった、そして、──」
「あの人は出ていった、そして、──」
「試験が終わった、そして、──」
たった3文字で明るい結末にもくらい結末にも導くレールのような言葉。
あなたなら「そして、」の後にどんな物語を描きますか?
tiny love
愛の告白、通算6連敗中。
彼女を好きになったのは保育園の頃。
初めての告白は保育園、次は小1、次は小3、次は小6、次は中1、次は中2、そして今日、中学3年、7回目の告白。
俺は今日、なんとしても告白を成功させなくてはいけない。なぜなら親の仕事で、近々別の県に引っ越してしまうからだ。
身だしなみを整えて、放課後体育館裏で彼女を待つ。
嫌そうな顔をして渋々彼女は来てくれた。
「…また?"好き"は聞き飽きたんだけど?」
いや今日の俺は一味違う、と首を横に振る。
「ううん。今日は、最後のお別れ。俺はそろそろ遠くへ引っ越すんだ。だから最後に本当に君に伝えたかったこと。……愛してます♡」
お茶目に指でハートを作って見せると、彼女は思い切り笑いながら俺の頭を小突く。
「最後までバカだね〜負けた負けた、降参。
はい、私の連絡先。遠距離だからって浮気したら殺すから。」
ぶっきらぼうに彼女から一枚の小さなメモ用紙を投げ渡された。
俺は彼女からもらった小さな愛をギュッと握りしめて、遠い所へ旅立った。
おもてなし
生まれて初めて"占い"というものに行ってみた。
半信半疑だったが、言葉巧みな占い師の話術に僕はまんまとハマった。
「占いは"裏ない"ですから。」
胡散臭い笑顔でダジャレまで言う。
「ははは、じゃあ、"おもてなし"には?裏があるんですか?」
「ええ、そうですね。裏心があるから人はおもてなしをするんです。」
「そうですか。なら、ぜひ今度僕から先生に"おもてなし"させていただけますか?」
どうやら僕は占い師の彼女を気に入ってしまったようだ。
帰り際、彼女に連絡先を渡してみた。
「あ、結構です。私は"占い屋さん"なので。」
クスクス笑って僕の連絡先を目の前でビリビリに破り捨てた。
占いもたまには悪くない。また、来よう。
消えない焔
部活にやる気なんか無かったし、3年間適当にやってればいいと思っていた。
俺は生まれつき運動神経はあって、やればある程度なんでもできる器用なタイプだった。
中学で友達に誘われて適当に入ったのが水泳だった。
何となく楽そうだと思っていたが、入ってみると、泳ぐより基礎体力作りみたいなものばかりで走り込みに筋トレと意外とキツくて完全にやる気を失っていた。
そんな時に、転校生がきた。
そいつは水泳のそこそこすごい選手らしく、転校早々、水泳部に入部してきた。
俺含め友達もみんな適当にやってた奴らばかりだったから、そいつの泳ぎを初めて見た時、全員が言葉を失った。
見惚れる程に綺麗な泳ぎだった、そして俺の心の中に何かが灯ったように感じた。
水泳は別に好きじゃない。けど、転校生に負けたくない。
その時、消えていたはずのやる気の焔がメラメラと立ち上ってきた。
終わらない問い
『テセウスの船』、『トロッコ問題』、『スワンプマン』、この世には様々な哲学の問いがある。
正しい答えの出ない永遠の問題。
これを単に不毛だと捉えるか、思考の楽しさを味わうか、人それぞれ変わるところも哲学の面白さだ。
たまには時間の余裕を持って、答えの出ない終わらない問いに考えを巡らせるのも良いものだ。