吹き抜ける風
目的もなく思い立ってドライブに出かけた秋晴れの日。
車を走らせると次から次へと紅葉が流れていく。
少し暑くなって車窓を開けると、ぶわっと風が入って来た。
車窓から吹き抜ける風は、焼き芋の匂いがした。
僕は思わず近くに車を停めて、移動販売の車へ駆け寄った。
記憶のランタン
思い出したくてもどうしても思い出せない。
また、ここに来てしまった。
ここは記憶の森。
入口で森の案内人にランタンを手渡される。
『これは、"記憶のランタン" あなたの思い出したい記憶が見つかると強い光を放ちます。森の中は暗くて様々な記憶が混在しているので、決してランタンを手放さないようにしてください。ランタンを手放してしまうと、その記憶はもう二度と戻ることはありません。』
アトラクションの注意事項のようなセリフを言い終えると、案内人は私の目の前をてくてく進み出す。
私は記憶のランタンをギュッと握りしめて彼の後を追って行った。
冬へ
やっほ〜 ᐕ)ノ 久しぶりだね。
また今年も君に会える感動で打ち震えております。…なんちゃって、僕は寒いの大嫌いだから、本当は寒さで体が震えております!
正直、会いたくなかったよ笑
でも君は何食わぬ顔して毎年いつの間にかやってくるから、僕はもう諦めた。
まぁ、君いい所もあるからね。
景色がすごく綺麗だったり、家族団欒させてくれたり、歳末セールとかなにかとお得だったり笑
寒いのは凄く嫌だけど、君の事は嫌いじゃないよ(,,- -,,)笑笑
P.S.
今年も、真っ白で綺麗な雪を待ってまーす!
親愛なる冬へ
君を照らす月
中学生の頃は多感な時期だと大人はよく言う。
多感が何なのかよくわからないけど、なんとなく面倒だとか複雑だとかそんな感じだろう。
その多感っていう病気なんだろうか。
俺は同級生に気になる奴がいる。俺と同じ性別。この「気になる」っていう気持ちも正直よく分からない。
気づくと目で追っている。ただそれだけ。
色々むしゃくしゃして家を飛び出した、ある満月の夜。行く宛てがなくて家の近くをただ彷徨っていた。
「わ!変質者だ!」
と、突然後ろから声をかけられてビクッとした。
あいつだった。
「…お前、こんな夜中に何してんだよ?てか、変質者じゃねぇし。歩いてただけだし。…なんでいんの?…って、ちょっ!」
無言で俺の手を引いてどこかへ連れて行く。
着いたのは近くの公園にある高台だった。
来いと言わんばかりに台の上に登る。
自然と俺も隣に腰掛けた。
「みて、月。満月。」
俺に向かってそう言うとすぐ月に視線を戻した。
チラっと月を横目で見て、俺は月に照らされたその横顔を見た。
多感の病気だ。
心臓が苦しくてドクドクする。
この病気が早く治りますように、俺たちを照らす大きな満月に向かって願った。
木漏れ日の跡
小さかった頃、私はよく地面を見て歩いていた。
木漏れ日の跡がマダラに映る地面が珍しくて面白くて、目が離せなかった。
木漏れ日が流れ込んでくるところに手を出して光を掴んでみたり木漏れ日の跡を踏んで歩いてたり。
光は常に私の身近なところにあった。
いつからか、木漏れ日の跡を眺めるためでなく、私の視線は常に地面を見るようになった。
疲れきった日常の中、ふと昔のことを思い出して休日、よく行っていた公園に赴いた。
ちょうど天気も晴れで昔を思い出して木漏れ日の跡と遊んだら、なんだか嫌なことがどうでも良くなった。
木漏れ日は今も変わらず私の目の前に差し込んでいる。