贈り物の中身
僕の父は僕が中学3年生、15歳の時に病気で他界した。
僕は受験生ということもあり、看病はほとんど母がしていて、心苦しい思いもした。
ちょうど志望校の受験の日に亡くなり、僕は父の最期を看取る事はできなかった。
ずっとその後悔を抱いたまま、僕はついに成人を迎えた。
母から小さな贈り物と手紙を受け取った。
箱の中には年季の入った重厚な腕時計が。
「父さんの形見」だと言われた。
母は父から僕が成人したら渡して欲しいと預かっていたそうだ。
それだけでも僕は充分嬉しかった、それから手紙を読んだ。
『愛する息子へ
君がまだ齢15という時に、この世を去ることになってしまったね。君が成長していく姿を傍でもっともっと、見ていたかったよ。君が大事な受験の時期に父さんの病気のことで色々迷惑をかけてしまったね、本当に申し訳なく思っているよ。君なら志望校に受かって、大学で学んで立派な社会人になると信じているよ。
20歳の誕生日おめでとう。
父さんが20歳の時に君のおじいちゃんから貰った腕時計。父さんのお下がりで悪いけれど、君への誕生日プレゼント。
これからも、父さんは空から君たちのことを見守っているよ。ありがとう。心から愛してるよ。』
今まで溜まっていた、大きな後悔の想いが解き放たれたような気がして、僕はプレゼントと手紙を抱えて、声を出して泣いた。
凍てつく星空
凍てつく寒さの夜。
空を眺めれば満天の星空。
空一面にスパンコールのようにキラキラと。
あまりの美しさに溜息が出た。
すると、息はたちまち白くなり星空に霞がかる。
君と紡ぐ物語
君と出会ってから私の人生に新しい物語が始まって、それまで灰色だった私の人生が色付いた。
毎日、面白いことも辛いことも何も無くて麻痺したようだった。
何を見ても感情が動かなくて、笑い方も泣き方も忘れてしまった。
そんな時に君と出会った。
初めはなんとも思わなかったけど、手と手が触れ合った瞬間、無くしかけていた感情が戻ってきた。
君は眩しいくらいの笑顔で私を見た。
ドキッと心臓が大きく動いて
「あ、この人だ。」私の心の中でそう声がした。
失われた響き
幼い頃から続けていたピアノ。
なんとなく、一生続くんだろうなって根拠の無い想いがあった。
でも、ある日突然、私の両手は動かなくなった。
若年性パーキンソン病だと告げられた。
ピアノを弾きたい気持ちだけが毎日毎日大きくなって、鍵盤に手を置くと筋肉が強ばって震えで手が動かない。
ピアノの前に座るだけで今では涙が止まらなくて、「動け、動け、動け。」と自分で自分の手を叩いたこともあった。
自分の手で美しい音色を奏でられることが好きで、生きがいだったのに、
病によって失われた響きはどこにも誰にも届くことはなくなって、ただ私の心の中に黒い塊となってこだまするだけだった。
霜降る朝
寒さで布団から出るのも億劫になる。
でも、仕事に行かなくちゃ。
起きて見る外の景色に息を呑む。
霜が降りて草木や車、道が白く縁取られていて、なんとも不思議な光景だった。
まるで額縁に入れられた、絵を見ているよう。
そんな、霜降る朝の景色を見ながら、ブラックの苦いコーヒーを飲み干す。
さあ、あの絵の中へ飛び出すぞ。
厚着して、意を決して、白く縁取られた世界へ。