白い吐息
朝から凍てつくような寒さだった。
その日、今年の初雪が降った。
そしてその日、私は生まれて初めてキスをした。
16時過ぎに辺りは真っ暗になった。
けれど、お互いまだ帰るのは惜しくて、なんとなく公園のベンチに座る。
肌に刺さるような空気に思わず身震いをすると、君はおそるおそる距離を縮めて、背中から腕を回して私をぎこちなく抱き寄せた。
長い沈黙。
だけど自然と苦痛ではなくて、でも、なんだかソワソワしている。
そうこうしてるうちに空から雪が舞い降りてきて
「あ!雪だ。」 そう言って、君の方を向いた時、君の顔がゆっくり近づいて唇が触れ合った。
スローモーションみたいにゆっくり。
頭の中で理解が追いつかないけど、頬と唇が熱を持ったように熱くなって、
火照った唇を覚ますように口をうっすら開けると、きれいな白い吐息が漏れた。
消えない灯り
俺は俗にいう死神を生業としている。
死神は人間の魂、寿命の管理をして、最期に魂と肉体を切り離して冥土に案内する仕事を担っている。
寿命の管理は無数にある長さも太さもバラバラのロウソクで行っている。
ロウソクの灯りが消える頃に、現世に赴いて仕事をする。
ただ、死神界にも不思議な話はあって。
昔、先輩が飲みの席で話してた噂話で、長さがずっと変わらずに、ずっと灯り続けているロウソクがある事を聞いた。
俺はまだ実際に見たことは無いが、
今も、実はどこかにずっと消えずに灯り続けるものがあるようだ。
消えない灯り、そう、現世には不老不死の人間が実在しているらしい。
ま、噂話だから眉唾だけどな。
きらめく街並み
街並みはいつもと同じなのに、なんでだろう。
君が隣を一緒に歩いてるだけなのに、まるでドラマの世界に迷い込んだみたい。
見慣れたいつもの街並みがきらめく。
君の綺麗な横顔が眩しくて、私は目を細める。
恋をすると、見える景色も変わるんだ。
秘密の手紙
学校から帰宅するとテーブルに1枚のメモ用紙があった。
『頭をやってくる。 父』
と一言書かれたメモ用紙。
私の父は一般人では無かったから、私はこのメモの内容を曲解してしまった。
普通の人なら「頭をやる」=「たぶん、理髪店に行くってことか?」と理解するところ、
私は「頭をやる」=「頭(かしら)をやる(殺る)」と変換してしまったのだ。
私は死に物狂いで急いで事務所に駆け込むと、部下に髪を削いでもらっている父の姿があった。
冬の足音
冬はまるで忍者のように私たちの背後から忍び寄る。足音を殺して1歩、1歩と確実に。
じわじわと寒さが迫り、気づいた時にはもう、冬本番。
暗殺者のように静かに迫る冬の足音。