はす

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2/16/2026, 11:10:29 AM

誰よりも

誰よりも優れているものとか、才能とか、あれば良いなと思うが、生憎そこまでの情熱も要領も無い。ネットの海を潜れば幾らでも上を見ることはできる訳で、それに比べれば大抵の人は凡人になってしまうだろうと思う。今日もこれからも、上を見上げながら、地に足つけて、目の前の何かに懸命に立ち向かっていくしかない。それは辛いことなのだろうか。まあ辛いと思ってしまっているのだから辛いのだろう。足るを知りたいと思う。

11/29/2025, 3:40:37 PM

失われた響き

人が人を忘れるとき、始めは声から忘れていくという。有名な話だろう。次に忘れていくのが顔。写真が残っていれば良いのだろうが。ぽろぽろと記憶が無くなっていくのは、寂しいと思う。
最後に忘れるのは、匂いだという。写真と違って記録に残すのは難しい。それを忘れてしまったら、そこに残るのは何なのだろうと思う。

そういう、忘れゆく記憶を思い出そうとする時、そこには「確かこうだっだ」という主観が入り込む。ぽろりとこぼれた一部を修復しようと、想像で塗り重ねて仕舞えば、それはもう元の記憶ではなくなってしまう。
それがまた剥がれ落ち、また塗り重ね、そうして出来上がった記憶の下で、元の思い出は死んでしまうのだろう。




これを書いていて、ふいに昔の、子供の頃の友人のことを思い出した。友人というか、たぶん、好きだった人。当時はまだ子供と大人の狭間の時期で、そういった感情に疎かったから、仕方がない。今思えば、きっと好きだったんだろうと思う。その人と喋って、笑い合うのが、好きだったから。

写真は残っている。でも、その人の声をもう思い出せなくて、悲しくなった。

6/24/2025, 10:35:03 AM

空はこんなにも

ふとした瞬間、見上げた空の青さに驚くことがある。
私は、私たちは、俯いて手元の画面ばかりを見つめているけれど、ほんの少し顔を上げればこんなにも美しい世界が広がっている事をいつから忘れてしまったのだろう。

アルバムをめくる。
子供の頃の写真に映る空は何であんなに青いのか。
いつからこんな風になってしまった?変わりゆく瞬間なんて捉えられないのは、分かってはいるけど。

でも、一つだけ思うのは、青い空の下、私は確かに幸せだったと。

6/17/2025, 2:56:06 PM

届かないのに

小さい手を大きく広げて、必死に上に飛び上がっては、落ちゆく太陽を掴もうとしている。
「取れる訳ないよ」
「とれるもん」
子供は笑ってそう言った。黒々とした目は、消えゆく太陽の微かな残り火をまだ映していた。その目を、その黒の中の橙を、何を思う事もなくただ私は眺めている。
その時、地平線の端に引っかかっていた太陽が、音もなくすっと落ちた。
あたりが暗くなる。闇に落ちる。私はそっと、安心する。なぜだろうか。日の落ちる瞬間だけ、ゆっくりと感じるのは。照らされるものが無くなるのに、安堵するのは。
その子供の手は、未だ落ちた太陽を掴もうと、瞳の様な空に目一杯伸ばされている。
「もう、沈んでしまったよ」
「ううん、まだ残ってるよ。見えないの?」
その目には、もうあの橙は残っていないのに、何故だかその奥に明るい何かが見える様な気もして。子供には見える。けれど私には……

黒いだけの地平線に、私も手を伸ばしてみた。やはり、指は何も掴むことはなく、ただ虚しく空を切った。


落日  川端康成の短編を参考に

6/11/2025, 4:17:04 AM

美しい

「百年、私の墓の傍に坐って待っていて下さい。きっと逢いに来ますから」
 自分はただ待っていると答えた。すると、黒い眸のなかに鮮に見えた自分の姿が、ぼうっと崩れて来た。静かな水が動いて写る影を乱したように、流れ出したと思ったら、女の眼がぱちりと閉じた。



初めて、文章を読んで美しい、と感じたのが、この『夢十夜』だった。今でも繰り返し読んでいるぐらい好き。上の文は特にお気に入りの言葉。初めて読んだ時、本当に自然と涙が出た。なんて綺麗な言葉なんだろうと。

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