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3/15/2024, 2:42:11 PM

「星が溢れる」



彼の目は不思議な色をしている。 
濁った青に、黄色の星が散りばめられているような瞳。
星空のようで綺麗だと言ったら、悪趣味だと返された。
彼はすぐに自分を卑下する傾向がある。



少し前のとある日、私は階段から落ちて一週間寝ていたらしい。らしいというのは、階段から落ちた後の記憶が全くないからだ。ただ、寝たきりで目も覚まさなかったということだけを後から知った。そして、そのとき私につきっきりで世話をしてくれたのは彼だという。
他にも看病をしてくれた方から聞いてみると、曰く、彼は私が目を覚まさなくなった3日目に1人で夜に泣いていたという。
私は、なんとも不謹慎極まりないが、見てみたかったという考えが最初に出てきた。
彼の星空のような目から涙が溢れるのは、まるで、星が溢れる様な光景なんだと、それを綺麗だと思ってしまったからだと。

3/2/2024, 12:29:19 PM

「たった一つの希望」


糸である。
触っただけで切れてしまいそうなほど細くて繊細な糸。
希望とは、そういうものだと教えられたのは9歳の頃であった。


母に言われ、父に教えられ、兄によって教え込まれた。
希望とは、ほとんどありはしない幻想、妄想の類であると。


私は生まれたとき確かに生きていたが、死んでいた。
兄の代わりに過ぎなかったのだ。私はいなかった。
思考を止めた、息をするのもやめてしまいたかった。
この世に、自分が自由に生きれるとは思えなかった。
口を開くのをやめた、感情を出すのもやめてしまった。
それほどまでに、私は幼子でありながら、諦めた。
ただ、それでも、やはり人とは哀しい生き物だった。

ずっと。
ずっと、ずっと、祈っていた。
自由に生きたいと、生きていたいと。
私は、自由に生きて良い、それだけを言われたかった。
誰かに救われるのをずっと待っていた。


細い、か細い、繊細な糸に縋り付くしかできなかった。

2/27/2024, 2:06:57 PM

「現実逃避」


今度こそ死んでしまう。手が届かない。あと少し、ほんの少しだけだから、だから__。

願いは虚しく散るものだと、神はいないのだと知らしめられる。彼を救えなかった。2回だ。1回目は、彼の自己犠牲によるもの。その時は、みんなが協力してくれた。
2回目、今回はわたし一人だけ。今回も彼がわたしを助けてくれた。

救助が来たのは、彼が死んだすぐ後だった。


なんてひどい悲劇だろうか。わたしが手を伸ばして彼の腕を掴めたら、彼と手を離さなければ、彼は死んでいなかったのに。


泣いた。無様に、哀しみに、自己嫌悪に、助かったことへの安堵感に、彼を失ってしまった喪失感に暮れ、ずっとずっと泣いた。そうすれば、彼は同情して今にもわたしを慰めてくれると思っていたから。

彼がわたしを抱きしめてくれると思い込んでいるから。

なんてひどい自分勝手な現実逃避であろうか

2/19/2024, 8:29:51 AM

「今日にさよなら」


彼は記憶が一日でなくなる。なので、毎日自己紹介から始まり、彼が、次は覚えておけるようにと言って書いていた日記を見せる。

もう少しで日付が変わってしまう。また、彼と別れなければならない。いつものことだけれども。

今日の彼は死んでしまう、けれど生きている。
なんと残酷だろう。なんと悲劇的だろう。
傷つき合うことで愛を確かめるのは愚かにも程がある。

彼はまた、明日には自分のことを忘れている。
だから、今日の彼にさようならを告げる。


彼がつけた日記を捨てる。
一ページしか書かれていない日記を捨てる。


明日の彼は、生きているだろうか


2/16/2024, 7:27:12 AM

しにたくない

そう書かれた手紙が、ある日届いた。

「死にたいって言ってるくせに」

そう言いながら、ロープに首をかけた。

やめて

また紙が手に落ちる。なにがやめろだ。臆病者のめ。

「…」

母親の声がする。夕飯ができたらしい。

「…親不孝者すぎるだろ、ぜってぇ地獄行きだわ。」

ロープを捨てた。

満足したのか、未来の自分。臆病者

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