お気に入り
想像に任せて 夜に星を描いた
あの頃にはもう戻れない
散らばったカセットにしまった音は
ノイズだらけで聞けなくなってた
君が言うことは全部
君が正しいから言えるだけ
諦めるな、だなんて
歌えるのは成功者だけだ
でも不幸って訳じゃない
ただ、静かに
何かを忘れて 何かを失って
何かが出来なくなっていくだけ
また明日が閉じていく
空想に委ねた 朝の夢の続き
起きあがれないまま 心の中でなぞる
散らかったCDはひび割れて
もう何も歌ってくれない
君が言うことは全部
君が強いから言えるんだ
未来は続いてく、なんて
思えるのは特別なだけだ
でも不幸ってほどじゃない
ただ、静かに
何かを知って 何かを置いてって
道が分からなくなっただけ
また明日が閉じていく
残しておいた手紙
お気に入りのコート
全部捨てないとね
今はもうジャマなだけだ
だけど だけど
諦めるな、だなんて
歌えるのは成功者だけだ
でも不幸って訳じゃない
ただ、静かに
何かを忘れて 何かを失って
何かが出来なくなっていくだけ
また明日が閉じていく
もう明日が閉じていく
良いお年を
一ヶ月ほど書いていませんでしたが、このアプリのおかげで創作の趣味が増えました。楽しい一年を過ごせて、感謝です。
来年も、良い年になりますように。
夜の見せた夢
誰も彼も駆け足で 何も見ちゃいない
スマホが歩いてる 人間はどこだ
「できないの」「そんなことも」
常識が人を狂わせているんだ
オンリーワンなんて言葉は
どうやら忘れ去られたらしい
ああ 少し生きづらいな
ああ 少し休みたいな
夜から抜け出せない僕でも
君が隣で笑っていてくれるなら
そのまま凍てつく星空の下で
開けない夜に肩を預けてしまおう
例えそれが 夜の見せた夢だとしても
とにもかくも薄っぺらで 何も残さない
言葉が歩いてる 責任はどこだ
「多様性」 「ひとそれぞれ」
解るかよ 他人(ひと)の心なんてさ
「自分らしく」なんて言葉も
そろそろ飽きられたらしい
ああ 少し生きづらいな
ああ 少し眠りたいな
夜から抜け出せない僕でも
君が変わらず笑っていてくれるなら
そのまま凍てつく星空の下で
開けない夜に肩を預けてしまおう
例えそれが 夜の見せた夢だとしても
足りないのは 欲しがるから
欲しがるのは 夢を見るから
それより空(から)の体一つで
少し歩くのも悪くないだろう
夜から抜け出せない僕でも
君が隣で笑っていてくれるなら
そのまま凍てつく星空の下で
開けない夜に肩を預けてしまおう
例えそれが 夜の見せた夢だとしても
例えそれが 夜の見せた夢だったとしても
「花雨」
霜降る朝の日差しに
目を覚ませば まだ
窓辺に残る夢の匂い
心の深呼吸をして
空泳ぐ 雲間を歩む
また私の今日は 時を進める
失われた響きを探して
あの坂を上れば
出会ったあの日と同じ
静けさが座っていた
君と紡ぐ物語
どうか忘れてしまわないで
からめとられ立ちすくんだ今日の日も
それさえ明日の糧にして
私と続く物語
面影は花の影に隠れ
雨帽子を被る亡霊に
この人生を届けるその日まで
生きて、生きて、生きよう。
お題
・君が隠した鍵
「ねぇ。 幸せってどんな形してると思う?」
車椅子を押す僕に、唐突に君が尋ねた。
「うーん……形って言われてもなぁ……君は、どう思う?」
僕は、答えに窮して、おうむ返しに質問を投げ返す。
「……内緒」
「ええ? なんだよ、それ」
夕暮れに染まる、住み慣れた町並みを背景にして二人は歩いていった。
子供の頃から親しんだ川沿いの道を歩きながら交わしたその他愛もない会話が――ユキとの最後の会話になった。
・手放した時間
「もう、五年になるのか――早いな、本当に」
僕は、ふと目に止まったカレンダーの日付を見て思い返す。
あと一週間で、ユキの命日だ。
僕の心に、ユキのいたずらな笑顔と――あの日に交わした会話が聴こえてくる。
「幸せの形、か」
僕は、まだその答えを見つけられていなかった。
そして、あの日ユキが言おうとしていた答えも、まだ分からないままになっていた。
・落ち葉の道
僕は、何の気なしに出掛け、ふらふらと当てもなく歩き続けて……。
気が付くと、あの日に歩いた川沿いの道に来ていた。
ここも、あの時と変わらない――。
そう、言いかけて顔を上げ、ふと気が付く。
あの時とは季節が変わり、道は鮮やかな秋の落ち葉で彩られていることに。
ここから見える町並みが、少しずつ変わっていっている事に。
目を伏せて歩き、ただ生きてきたこの五年間で、初めて時の流れを直視した瞬間だった。
『ねぇ。 幸せってどんな形してると思う?』
あの日のユキの声が、再び僕に問いかける。
あなたの想い描く――答えを見つけられた? と。
・時を繋ぐ糸
「そっか、君は……見つけてたんだね」
僕はユキが、あんなに若くして理不尽な運命に流されるまま旅立つことになり。
どんなに悔しかったか。
どんなにか、悲しかったかと。
ただ、そんな想像しかして来なかった。
でも、そうじゃなかったんだ。
あの最後の川沿いの散歩をした二人の時間。
あの時ユキが見ていたのは、悲しい運命でも過去の後悔でもなく――。
こんな風に、移ろう季節を。
こんな風に、未来に向かい変わって行く町並みを。
ユキは、しっかりと見据えていたんだろう。
「ああ――そうか」
あの時ユキは、ただ「今」を見て生きていたんだ。
「幸せだった」んだ、と。
ようやく、僕は気が付いた。
ユキは、残された砂時計を目一杯使って、自分なりの答えをとっくに見つけていたんだ、と。
幸せの形。
僕の、幸せの形は――。
『あなたなら、もう大丈夫。 自分の人生を生きて』
ユキの声が、確かに聴こえた。
思わず振り返りかけた僕に、冷たい木枯らしが吹き付ける。
振り返らずに前にすすんで、とでも言うかのように。
僕は、あの時とは変わってしまった今を。
しかし、確かに時を超えて繋がっている今を顔を上げて生きて行く、と。
そう、心の中で思いながら、再び歩き始めた。
ユキが見ていた幸せの形に思いを馳せながら。
自分が見つけた幸せの形を見つめながら。