伝えたい。あなたに伝えたい。
伝えたい。あなたに伝えたい。
「ああ、翼が欲しい……」
どこまでも攫っていってあげるから。
伝えたい。あなたに伝えたい。
「大事にしてあげるから」
伝えたい。あなたに伝えたかった。
「大事にしてあげたのに」
この場所で踊ろう。
全てを忘れて踊ろう。
私はあなたに手を差し出した。あなたは重たい厚底のブーツを脱いで、その手を取った。
優しい歌を口ずさむ。
ラー…ラー…
あなたは笑った。無邪気に笑った。
愛おしい、と思った。
この場初で踊ろう。全てを忘れて。
放課後の図書室は、いつもより少しだけ暗かった。天雲が窓を塞ぎ、棚の背表紙たちが影に溶けている。
彼女は机の端に肘をつき、ページを捲る。文字が頭に入らない。隣にいる彼女の存在が、やけに近い。
言葉は多く要らなかった。沈黙は、決して重くない。むしろ息遣いが互いの距離を測る定規になっていた。
彼女は視線を落とし、私は雨の雨粒を数える。数えきれないと知りながら。
ふと、私は彼女をみた。目が合う。
その瞬間、世界は小さく畳まれた。図書室も、雨も、時間も、二人の間に。
約束ではなかった。宣言でもなかった。ただ、確かめるように触れるだけ。
唇が触れた時、私は思った。温度がある、と。
それは情熱の熱ではなく、手のひらで確かめる体温に似ていた。逃げ場を奪わない、しかし戻れない一歩。
すぐに離れた。ほんの一瞬。
それでも、図書室の空気は変わった。ページお城が少し眩しくなり、雨音が和らいだ気がした。
彼女は何も言わない。私も何も言わない。
キスは言葉を置き去りにした。だから、沈黙は破られない。
帰り際、私は本を閉じた。
物語は続きがある。でも、今はそれだけでいい。
あの一瞬が、しおりになったから。
あなたに届けたい。
この憎しみ。この苦しみ。
あなたに届けたい。
この胸の高まり。愛情。
ねえ、届けるにはどうすればいいかな?
私はあなたの骨壷から遺骨を取り出して、その中でも一番小さい礫にキスを落とした。唇をこじ開け、口内で転がす。奥歯で噛み締める。
パキリ
どんどん小さくなっていくあなたの欠片。
ごくっ
私はそれを飲み込んだ。鋭いエッジが確かに私の喉をなぞり、傷つけていく。
痛い。
ああ、死んだ後ですらあなたは私に微かな痛みを残していくのですね。
あなたに届けたい。
この憎しみ。この苦しみ。
あなたはどんな顔をして受け取ってくれるのでしょうか。ねえ、お願い。こっちを向いて。
愛していますよ
今日は愛について考えてみようと思う。
私は愛が好きだ。人を愛するのが好きだ。人に愛されるのが好きだ。私は愛が好きだ。
私は愛を差別と定義している。愛していない存在を差別しているのか、愛している存在を差別しているのか、正確にはわからなかったけど、確かに愛は差別で、私は差別を愛していた。
私は愛を理解と定義している。私は理解が好きだ。相手を理解することも、理解してもらうことも愛だと思う。理解は愛だ。相手のことを理解しようと踏み出す一歩が愛だ。相手を理解しようと立ち止まり、相手のことを考えて時間を無駄にする。これが愛でなかったならば何が愛なのだろう。
理解は美しい。とても美し井。理解は愛というより、私は理解を愛しているのかもしれない。受容と共生も美しいだろう。素晴らしい、人間は理解し合うことができる。なんて美しい生き物なのだろうと、私は常々思うのだ。