10年後の私から届いた手紙
拝啓、10年前の私へ。
元気ですか。これを書いている私は、あなたが想像していた通りの大人になれているでしょうか。
今の私は、あなたががむしゃらに追いかけていた「将来」に立っています。正直に言うと、当時の悩みのいくつかは、時間が魔法のように解決してくれました。でも、その代わりに新しい課題や、あの頃には想像もつかなかった責任も抱えています。
今のあなたに伝えたいのは、「迷うことを怖がらないで」ということです。あなたは今、何が正解かわからず足踏みしているかもしれません。けれど、その遠回りこそが、今の私の「深み」を作っています。無駄だと思っていた趣味も、報われなかった努力も、全部つながって今の私を支える大切なピースになっています。
それから、周りの人を大切に。 忙しさに追われて見過ごしてしまいそうな小さな優しさが、10年後の私を温め続けています。
未来の景色は、あなたが思うほど完璧ではないけれど、案外悪くないものです。だから、あまり肩の力を入れすぎず、今しか見られない景色を全力で楽しんでください。
10年後、最高の笑顔で再会できることを楽しみにしています。
バレンタイン
甘い香りの招待状
二月で、もっと自由な、感謝を分かち合う日へと姿を変えている。
今年の私は、台所でひとり、静かにチョコレートと向き合う時間を持った。ボウルの中でゆっくりと溶けていく黒い塊を見つめていると、不思議と心が整っていく。丁寧に温度を測り、慎重に混ぜ合わせる。そのひと混ぜごとに、日頃は照れくさくて言葉にできない「ありがとう」の気持ちを閉じ込めていくような感覚だった。
出来上がったお菓子をラッピングし、大切な人たちへ手渡す。その瞬間の、相手の少し驚いたような、そして和らいだような表情。その笑顔を見るだけで、私の胸のうちは温かな充足感で満たされた。
思えば、私たちは日々の忙しさに紛れ、身近な人への想いをおざなりにしてしまいがちだ。バレンタインという一日は、そんな私たちが立ち止まり、誰かを想うための「招待状」なのかもしれない。甘いお菓子は、単なる食べ物ではなく、心の距離を縮めてくれる魔法だ。来年もまた、この優しい香りに包まれながら、大切な人たちとの絆を確かめ合いたいと思う。