花とコトリ

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12/21/2025, 12:46:43 PM

降り積もる想い

窓の外は、音もなく白が重なっていく。
世界が静まり返るほど、胸の奥にある言葉たちが輪郭を持って浮かび上がってくる。

熱いコーヒーを淹れる。
立ち上る湯気の向こう側で、クロが眠っている。
時折、夢を見ているのか足先をぴくつかせ、小さく鼻を鳴らす。

「ねえ、クロ。私たちはこうして、どれだけの時間を分け合ってきたんだろう」

返事はないけれど、彼の規則正しい寝息が、私のささくれた心をゆっくりと平らにならしていく。

降り積もるのは雪だけじゃない。
あの日言えなかった言葉も、何気ない朝の光も、クロの背中の温もりも。
すべてが層になって、今の私を作っている。

冷めかけたコーヒーを一口。
苦みの後に残るわずかな甘さが、今日の私にちょうどいい。

12/20/2025, 4:33:25 PM

時を結ぶリボン

10月4日。
朝の光が、窓辺で眠るクロの背中に落ちている。
黒い毛並みが、一筋の銀色に光った。
それはまるで、過ぎ去った時間と今を繋ぎ止める細いリボンのよう。

10月12日。
湯気の向こう側で、コーヒーが静かに揺れている。
一口含むたび、心のささくれがゆっくりと解けていく。
「ねぇ、クロ」
呼びかけると、彼はあくびをひとつして、
ただ静かに私の一部を肯定してくれる。

11月2日。
私たちはいつも、目に見えないリボンを編みながら生きている。
コーヒーの苦みも、クロの温もりも、
すべては「いつか」へと続く、愛しい結び目。

流れる雲を眺めながら、
今日というリボンを、私はそっと指先に結んだ。

12/19/2025, 1:04:14 PM

手のひらの贈り物

冬の午後の、頼りない光。
ソファに座っていると、クロが足元にやってきた。
そっと差し出した私の手のひらに、
クロは迷わず、その温かいあごを預ける。

ただそれだけのことが、
遠くの国の誰かからの手紙よりも、
ずっと昔に失くした宝物よりも、
今の私を静かに満たしてくれる。

手のひらに伝わる、ささやかな鼓動と体温。
世界はたぶん、こういう小さな贈り物で、
優しく包み込まれているのだろう。

「いい子だね」
呟いた声は、そのまま光の中に溶けていった。

12/18/2025, 2:05:33 PM

心の片隅で

夕暮れ時。
部屋がオレンジ色に染まっていく。
心の片隅に、
小さく灯った光がある。
それは明日への、ささやかな期待のようなもの。

コーヒーを淹れると、
香ばしい香りがゆっくりと広がった。
「ねえ、クロ」
名前を呼ぶと、
クロがとことこ寄ってきて、しっぽを振る。
黒い背中に夕陽が溶けて、
まるで金色の魔法がかかっているみたいだ。

今日が終わる。
でも、それがなんだか嬉しい。
明日は今日よりもっと、
いい日になるような気がするから。

12/17/2025, 2:23:07 PM

雪の静寂

世界から一切の音が消えた。
カーテンを開けると、そこには夜明け前の青い透明な時間が降り積もっている。
銀色の粒子をあふれさせたような、しんとした静寂だ。

私は湯気を立てるコーヒーを一口含み、その苦味で目を覚ます。
足元では、影のように黒いクロが、雪の気配を察して鼻先を震わせていた。

私たちはただ黙って、白く塗りつぶされた庭を眺める。
言葉にすれば壊れてしまいそうな、けれど新しく生まれ変わったような夜明け。

寄り添うクロのぬくもりと、コーヒーの熱。
このささやかな温度こそが、新しい今日を始めるための、私だけの合図だった。

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