初心者A

Open App
2/18/2026, 9:22:15 AM

⑤『お気に入り』


....今年の夏休みは楽しくなりそう、なんて。

ーーーーー

初めての出会いは小学生だった。
確か4年生の時...教室の隅で1人、文庫本を読んでいた。指で口を抑えてくしゃりと笑った貴方の横顔にどきりと胸がはねた。

自分の前でもそんな風に笑って欲しくて、本から視線をを引くために校庭に誘った。


........その時からあなたは私のお気に入りだった。


その日から毎日一緒に下校した。休日には公園で家庭用ゲームをしたり、貴方が好きな文庫本を読んで、ごっこ遊びをしたり。

中学生になると、お互い部活で下校時間が合わなくなった。貴方が見つめる先には別の誰か。
クラスも一度も被らなくて一緒に帰宅する事が無くなって。会おうと思えば会えたはずなのに心の距離ができていった。

そして今年の春、入学式で校門前で写真を撮っていた貴方を見つけてドキリと胸がはねた。
学校だけではなくクラスも同じになれた。これは運命だ....なんて。
長いホームルー厶が終わってお互いやっほ、なんて手を振りあった。席は遠いけど近い。


そして夏休み前、最後の席替えが終わった。


ー閑話休題


午前11時00分、梅雨時だからか最近雨が多くて気分が上がらない。

相変わらず退屈な授業だな、なんて肘をつきながら板書を写していく。

「先週から言っていたが、今日はグループでこのプリントをやってもらうから」と教師がプリントを配り始めた。

そして教師の合図とともに机や椅子が床を擦る音と机同士ぶつかる音が教室に響く。

斜め後ろの席の貴方はボーッと前の方....自分の方を見ていた。
何か考え事、なんて目を合わせて声をかけてみる。いきなり声をかけたからか慌てたような声で返事をして視線を逸らされてしまった。
ここテストに出るからな、と教師の言葉で私も黒板へ目を向ける。

そしてグループワークを終わらせるチャイムが鳴る。
途端に教室が騒がしくなる。昼食を食べるため席を立つ人、友人の元へ向かう人。

今回のテストやばそう、と勇気をだして声をかけてみる。放課後図書室で勉強することを提案してもらった。
誘ってくれたことが嬉しく、勢いよく返事をしてしまう。
少し驚きつつあまりの勢いにくすくすと笑い声が聞こえる。

恥ずかしい...なんて。


ーーー

午後1時02分、体育館の重たい扉から見えた雲の隙間の光。
ダンダンッと木の板を跳ね返るボールの音が体育館に響く。すぐ隣のコートには貴方。

そういえば貴方は運動が苦手だっけ、なんて思いながらも試合に集中する。

ピーッという笛の声で自身のチームが勝ったことを確信し、チームメイトとハイタッチをする。

隣のコートの貴方を見つめていると、目が合った。ずっと見ていたことがバレたくなくて、慌ててグッドサインを向ける。

ーー

午後5時01分、二人で図書室に向かう途中、貴方は中庭の紫陽花に目を向け足を止める。煌めく西の陽に照らされキラキラと輝く紫陽花は貴方に似合う。

そして数秒止まっていた貴方はこちらへ向けて動き出す。

貴方は正面に、どきりと心臓が跳ねる。

そして貴方から告げられる

ーーーー。


...だって貴方はーのお気に入りだから

ーーーーーーー
毎度の事ながら性別は読者様の解釈に委ねております。
以前書いた作品の告白される側の視点です。

読んでくださった皆様の明日が少しでも良い日になりますように

2/16/2026, 1:47:53 PM

『誰よりも』


....今年の夏休みは何しよう。

ーーーーー

初めての出会いは小学生。
あれは確か4年生の時...友達とクラスが離れて中々馴染めず教室で1人、文庫本を読んでいた時。貴方は笑顔で手を差し伸べて、校庭に誘ってくれた。

........多分その時から好きになってた。

そこからは家の方向が同じということもあり毎日一緒に下校した。休日には公園で家庭用ゲームをしたり、文庫本の主人公になりきってごっこ遊びをしたり。

中学生になると、お互い部活で下校時間が合わなくなった。クラスも一度も被らなくて一緒に帰宅する事が無くなって、どんどん距離ができていった。

春、入学式で前の方で歩く姿を見てドキリと胸が跳ねた。学校だけではなくクラスも同じになれた。
長いホームルー厶が終わってお互いやっほ、なんて手を振りあった。席は遠いけど近い。


そして夏休み前、最後の席替えが終わった。


ー閑話休題


午前11時03分、教室のカーテンの隙間から見える外は土砂降り。
ここ最近は雨が多くて髪がはねて困るな、なんて肘をつきながら斜め前のあなたを盗み見る。

白いものが視界をかすめはじめて、前からプリントが回ってきたことに気づく。
慌てて軽く謝罪しプリントを受け取る。

教師の合図とともに机や椅子が床を擦る音と机同士ぶつかる音が教室に響く。

なにか考え事、なんて声をかけてくれた貴方は斜め前。焦って上擦った声で返事してしまい、堪らず視線を逸らす。
ここテストに出るからな、なんて言う教師の言葉でコツコツと音が鳴る黒板へ目を向ける。

グループワークを終わらせるチャイムが鳴る。
途端に教室が騒がしくなる。昼食を食べるため席を立つ人、友人の元へ向かう人。

今回のテストやばそう、と声をかけてくれた貴方に放課後図書室で勉強することを提案するー。


ーーー

午後1時02分、体育館の重たい扉から見えた雲の隙間の光。
ダンダンッと木の板を跳ね返るボールの音が体育館に響く。貴方はひとつ隣のコート。

さすがパス上手いなとか、ハイタッチ羨ましい、だなんて...試合途中なのに盗み見てしまう。

ピーッという笛の声ではっと意識が自分のコートに向く。相手に点を取られてしまった。こちらも点数がギリギリなので試合に集中する。

バッと手を出してボールを捉える。
普段は自分からボールを触りに行くなんてこと、しないのに。

ふと目が合って、ピースサインをこちらに向けてくれた。

ーー

午後5時01分、図書室に向かう途中、中庭にある白い紫陽花が煌めく西の陽に照らされキラキラと輝く。

貴方は正面、早くなる鼓動。普段より重くなった鞄をぎゅっと握る。
ふぅ、ひとつ深呼吸。はねた髪を撫でる。



ー貴方の事が誰よりも


ーーーーーー
お互いの性別はあえて不明にし、読者様の解釈に委ねる作品になっております。

貴方の明日がより良い日になりますように。

2/16/2026, 6:40:10 AM

『10年後の私から届いた手紙』

教室の窓からこぼれる暖かな光。
社会科の教師が語呂良く覚えればいい、なんて読み上げる年号。優れた人間ばかり出てくる社会科は嫌いだ。
そして黒板を滑るチョークの心地よいリズムに堪らずうとうと、と船を漕ぐ。

暖かな日和。勝負の春。

どうせ無駄、なんて私が私を諦めたのはいつだっただろうかー。

SNSないしインターネットには日々さまざまな情報が飛びかう。その中でも特に目につくもの、オタ活Vlogだったり、友人との誕生日会...。そこには夜にキラキラと輝く都会のオフィス街が広がっているようだ。
一方、私はどうだろうか。代わり映えのしない日々、数少ない友人...。まるでチカチカと点滅する地元の古びた街灯のよう。
日に日に削られてゆく自尊心。皆と同じ暦を歩んでるはずなのに、私は高校1年の春から1歩も進めていない。

そんな頭の中でぐるぐると考えていた時、別冊のページを開けとの指示が出る。
机の中に手を入れてそれを探そうとした時、カサリと何かが手に当たる感覚がした。

それは宛先のない淡い橙色の包みだった。
誰かからの告白...なんて淡い期待を持ちながら封を開ける。


.˚⊹⁺‧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈‧⁺ ⊹˚.

ー10年前の私へ。

お元気ですか?きっと今の貴方は外界からの様々な情報により時が止まったかの様な、自分だけが取り残された様な気持ちを抱えてるかと思います。
そんな今を、自分なりに必死に生きている貴方に伝えたいことがあります。
10年後の貴方は、あなたが想像しているキラキラとした何者かにはなれません。
けれど、本当の私になることは出来ます。

この瞬間に目を向けて。

.˚⊹⁺‧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈‧⁺ ⊹˚.


何者かになれなくても、私にはなれる...。
綴られている言葉は矛盾しているように見える。
.......けれど

教師が話す言葉に耳を傾けてみる。
分かりにくい独特な表現は嫌い。でも、その言い回しは嫌いじゃない。
もう少し自分の知らないものを知りたい。


未来を見てみたくなったかも...なんて。


ーーーーーーーー
読んでくださった方の未来が少しでも明るくなりますように。

2/14/2026, 1:27:16 PM

『バレンタイン』

どこかの企業が販促の為に作ったイベントでしょ?そんなのに踊らされるなんてバカばっか....

頬杖をつきながら窓の外をボーッと眺める。
外は快晴。暖かな日差しがポカポカと体を温める。最近までは寒さから日中もマフラーをひざ掛けにしていたのに、今日はそれだと少し暑くて鞄の奥深くへしまってある。
午後2時半。お昼後なことも相まって現実との意識が曖昧になる。


そう、あの時もー。

今日みたいな暖かく日差しがポカポカと自分を照らしてくれた日。

...様、....‪⚪︎様?、、𓏸𓏸様!!

さわがしく名を呼ばれたかと思うと手元に数滴墨が垂れていた。
歌を詠みながら庭を眺めていて、気づいたら微睡んでいたらしい。
どうやら宴のための装束の確認をしたいらしい。垂れた墨を拭きつつ季節にあったものを選んでいく。

...場面は移り、宴の席にてー。

皆が集まり雅楽の演奏が始まったかと思うと、装束の披露が始まる。やれ、春めく色目やら、やれ、あてやか等各々の装束を愛でている。
装束の披露が終わると政治的交流を持つもの、歌を詠み交わす者など各々が宴を楽しむ。
それを横目に見ながらも自身は混ざろうとはせず庭にある梅の木を眺める。

すると、突然視界に影ができる。ふらりと現れた人は横に来て自身と同じく梅の花を見上げ口ずさむ、梅の木いとをかしー。

自身も部屋で詠んだ歌を、
梅の花を見上げながら詠みかける、ーーー。

外は快晴。梅の花弁がひらりと宙で揺れる。


ーーー...𓏸𓏸さん?

その声ではっと現実に戻る。
考え事をしていた、なんて咄嗟にバレバレな嘘をつく。そんな姿を見て笑いながら"何か"を手渡してくれる。白い箱に薄ピンク色のリボン。じゃあ、と言い颯爽と行ってしまった。
そんな姿にクスッと笑いながらふと思う。

あの時と同じ色........

...........あの時?
夢なのか現なのか朧気な記憶。

午後3時。外には梅の花弁が風に揺られてヒラヒラと上へ舞い上がっていく。


たまにはこんな日も悪くないかも、なんて。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
※登場人物の性別、年齢は読者様のご想像にお任せいたします。
※史実と相違点があるかとは思いますが、フィクションとして楽しんでいただけると幸いです。

2/14/2026, 9:26:41 AM

【待ってて】

いつもと変わり映えしない車両、景色、同じ立ち位置ー
僕は今、希望が見えない。
自分の将来、というか1年後、明日の事すら曖昧でモヤがかかっている。
君もそう思うことがないだろうか。
自分は何も成し遂げていないちっぽけな人間に思えたり、(まぁ、実際そうなのだが
自分以外の人が優秀に見えたり等....

閑話休題。

自分が自分ではないような...。これを*解離障害などと言うらしい。だが、僕に当てはまっているかと言われても医療機関で検査はしていないので分からない。
そんな何物でもないような感覚を持ち続けながらも自分から動けないのは.....動かないでいるのはやはり希望という光をもう見ることができないからなのだろうか。

そんなことを思いながら今日も満員電車に揺られている。電車の吊り広告に目をやると今季のアニメ広告がある。
皆スマホの画面に夢中で吊り広告が変わったことも気づかないんだろうな、なんて皮肉りながらも自分を振り返る。
最近は、忙しさに新しいアニメや曲を聴くことを躊躇い見たことがあるものや聞いたことがあるものばかり触れていた気がする。広告に背中を押されたような気がして、動画サイトをクリックし広告のアニメを見る。
日々仕事と家の往復で、新しいアニメを見る余裕すらなかった自分。けれど新しく一歩を踏み出せた気がした。
いや、変わらなかったのは自分なのかもしれない。いつもと同じ車両、菜の花畑、同じ立ち位置。明日の朝はこのアニメの続きを見よう。

ー待っててー

モヤがかかっていたはずの明日が楽しみになった。



ーーーーーーーーー

*解離障害: つらい出来事から心を守るために、
「現実感がなくなる」「記憶が抜ける」などの状態が起こること(諸説あり)

Next