ピンクに包まれているなんともいえない世界。
彼女がどんな夢を見ているのか気になり、人の夢に入ることが出来る"ユメハイール"を開発して、早速入ってみたが……ピンク一色でなんてやらしいんだ。
だが、そう思ったのは一瞬だけだった。
ピンクの世界で、全裸おじさんが一人で踊っている。
……なんだこれ。
そういえば、彼女はおじさんが好きって言っていた。
「俺はおじさんじゃないのに、なんで告白をOKしてくれたんだ?」と聞くと、「これからおじさんになっていく姿を見たいからだよ」とよく分からない回答をされたことを思い出す。
その時は彼女が出来て嬉しかったから気にもしなかったけど、今思うと少し変だな……。
俺が歳をとって、おじさんになったら、こんな風に踊らされるのだろうか?
「そこの坊や。一緒に踊りましょ」
しかもこの全裸おじさん、オネェ口調だし。
彼女の夢なんか覗かなければよかったな……。
誘いを断るのは申し訳ないから、少しだけ全裸おじさんと一緒に踊ってやった。
「昨日ね。君が楽しそうに踊ってる夢を見たよ」
次の日、彼女から俺の夢を見たと言われて、ハッとする。
どうせなら、もっと別のことをすればよかったと後悔した。
一歩先に突然現れたスポットライト。
入ろうするとライトは消え、また一歩先に現れる。
いつの日か、スポットライトの中に入ることが出来るのだろうか?
人生のスポットライトを浴びるために、毎日ライトと追いかけっこをしている。
夜空で光り輝く星達。
身体が弱かった彼女は、先日亡くなって星になった。
『私、多分あなたより早く死ぬと思うの。もし、あなたより早く死んだら……星になって、あなたのこと見守ってるから』
星空を見ながら冗談混じりで言っていた彼女。
いや、今思えば冗談ではなかったのだろう。
見守ってる……か。
夜空には、無数の星達が光り輝いている。
きっと、この中に彼女がいるに違いない。
俺は星になった彼女に向かって、"ここにいるよ"と大きく手を振った。
空に響き渡る鐘の音。
離れた場所からでも、よく聞こえる。
どうやら、今日は結婚式が行われているらしい。
持っていた結婚情報雑誌をギュッと握りしめる。
私もいつか……鐘の下で好きな人と……。
結婚願望はすごくあるのに、相手が全く見つからない。
まぁ、私がイケメン好きで、相手に求めるものが多すぎるからだろう。
鐘の音が、だんだんと遠のいていく。
私が結婚するのは、まだまだ先かも……。
「はあ……」
大きな溜め息をつきながら、その場から早足で立ち去った。
空からひらひらとゆっくり落ちてくる白い雪。
今日は大寒波の襲来で、日本中で雪が降るらしい。
パラシュートで着地するように地面へ落ち、少しずつ積もっていく。
私の住む地域では滅多に雪が降らないから、気持ちがちょっとしたお祭り騒ぎになる。
あっという間に地面が白に染まり、屋根の上にも、車の上にも、雪が積もっていく。
ドサッ、ドサッ。
雪を踏むたびに音が鳴る。
足元を見ると、足首まで雪で埋まっていた。
うーん……ちょっと降り過ぎかな?
さっきまで気持ちがお祭り騒ぎしてたけど、だんだんと不安になる。
雪は私の気持ちを気にもせず、降り続けた。
家に戻り、テレビを着ける。
「うわぁ……」
家が埋まっている映像が映っていて、思わず声が出た。
今、日本中のあちこちで、家が埋まるほど雪が積もっているらしい。
気象庁は、今回の大寒波を超最強大寒波と名付けていた。
もしかしたら、私の家も雪で埋まってしまうのだろうか?
不安から恐怖へと変わり、身体が震える。
テレビを見続けていると速報が出て、避難指示が出る地域まで出始めた。
雪は、あと二日間降り続けるらしい。
あまりにも異常過ぎる。
万が一のために、避難の準備をしなきゃ。
立ち上がって窓を見ると、窓の半分が、白で埋まっている。
さっきまで地面だけ積もっていたのに、短時間でこんなに積もるなんて……。
改めて、自然の恐怖を思い知った。