ごろ

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11/24/2025, 4:45:29 PM

君が隠した鍵


私は、この部屋で監禁されている。毎日朝、一人目を覚ませば、暗い部屋に入ってくる光を見る。

そして両手に湯気の出た朝ごはんを持ってくる男の顔を見ると、途端に苛立ちが湧いて彼に怒鳴る。

「出して。ここから。」

「……出せないよ、家にも帰れないのに」

そう、私は家に帰れない。家の場所を覚えていない。この男の顔も名前も覚えていない。

数年前に起こった、交通事故で恋人だった男の名前も顔も、自分のことすらも忘れ去った。

君が隠しているのは、私が無くした鍵だった。

私が、事故で彼との思い出に蓋をした。

それを彼が私に悟られぬように蓋の鍵を握っている。いつか、いつか記憶の箱が開くと信じて。

「家、家にかえ、りたい。」

同棲している彼に、そんなことを言っても意味が無い。私の頭にある家は存在しない。

帰りたい。と言っても帰る場所もないのだ。




だから君が鍵を隠した。


……私が、

自分の記憶と全てから逃げ出さぬように。

11/7/2025, 4:34:11 PM

灯火を囲んで



死んだら、みんな灯火を囲うらしい。
私の住んでいる村では、そうゆう風習がある。
死んだ遺体を真ん中に置き、灯火で燃やす。
お坊さんの歌う歌を歌わなかったものは、呪われるという。

「…………」

お坊さんが歌っている中、私は灯火の中にいる、彼の顔を見た。

みんなが歌っているのに、私だけ口を開かずにじっと鋭い視線で睨みつけた。焦げ付いた顔を。


私が殺した彼の顔を。

「すごく、汚い顔ね」

それでいいと思えた。
私の彼氏を奪い去って、母と父を脅かした。それなのに、灯火で焼かれるだけで幸せだと思える。


「灯火で焼かれるだけで、よかったね」


後日、彼を殺したと告白した女が、

灯火に入れられた。



「きっと、呪いね。」
「そうよそうよ!あんなのは呪いよ!」
「いい子だったのにねぇ」


許さない。母と父を脅かして。
二度と許すものか。

地獄へ落としてやる。そして必ず。

私の手で灯火を囲ってやる。

9/23/2025, 11:33:03 AM

僕と一緒に


「あああああ!」

精神科、閉鎖病棟で叫ぶ彼女の姿。
涙を流しながら叫び、光を失った目。

そんな彼女が、好きなのは変わらない。

でも彼女に対して、安楽死が決まった。
悲痛な選択を取った彼女の親。

僕は、彼女の親を殺した。惨殺した。


何度も何度もナイフで刺し、

血を、内蔵を抉った。


僕もどうせ死ぬ。死刑になって、殺される。

彼女と同じだ。


最期に、彼女の身体を抱きしめた。言葉にならない言葉を話す彼女の肩に、涙が落ちる。

「大丈夫、僕がいるよ」


「一緒に、死のうか。"僕と一緒に”」

9/9/2025, 5:21:13 PM

フィルター


レンズのフィルターには色々隠せるものが存在する。

私もそれで色々隠していた。

スマホでやるような、消しゴムマジックでは無い

私は、
自分が隠しているものを知られてはならない。


だからフィルターをかけていた。

しかしパパラッチで破かれた。

俳優なのにも関わらず、一度人を殺していること

色々な異性と関わりを持ち、身体を重ねたこと


「バレちゃいけないんだよ、そうゆうのは」

「フィルターってね、人のプライバシーなの。破いていいわけないんだよ?」


「だから、死んで?」


そう言って、フィルターをかけた。

8/11/2025, 4:58:19 PM

こぼれたアイスクリーム


私の好物はアイスだ。それは昔からずっと。

大好きな彼に出会い、幸せな時を過ごす時ですら、アイスは欠かせない。

そんな私が彼との子を妊娠した時も、幸せだ。
彼が喜んでお腹をさすった時も幸せだ。

彼は喜んで私を可愛がった。
身体を重ねた時ですら、私がアイスを好んで食べるのと同じように。


甘く優しい「バニラ」味。

でも怒った時は、苦くて冷たい「抹茶」味。

時々、ツンデレが発動する「チョコレート」味。

彼の蓋を開ければ、色々な味に出会えた。



でも、私は死んだ。

車に撥ねられたのだ。お腹の子とともに。


彼は泣いた。何味でもない彼。

初めて見た。


味が「こぼれた」アイスクリーム。


アイスは、どん底に落ちたせいか、



「「無味無臭」」だった。

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