一緒に暮らしている恋人に対して秘密でいられる場所を探した。
家の中だと難しくて、一度見つかりそうになったけど何とか誤魔化した……と、思う。
そうして私は彼へのクリスマスプレゼントを会社のロッカーに隠す。
手のひらに収まるボックスには、私の左手の薬指に輝く指輪のお礼と一緒に、あなたの時間をくださいと願いも込めた。
職場は違うからバレないけれど、からかいの洗礼は受けるけど構わない。
彼に渡すプレゼントがバレなきゃいいんだもん。
彼の手元に渡るのは、あと少し。
あと、もう少し。
おわり
五八二、手のひらの贈り物
気がついたら目で追ってしまう。
おっちょこちょいですぐ怪我をする彼女と一緒にいるのは心地よくて、視線を向けてしまっていた。
でも最近、彼女とよく目が合うんだ。
パッと目が合うとちょっと心拍数が上がる。でも自然と笑うんだけれど彼女も一緒。
その笑顔がまた……うん。可愛いんだよね。
あ。
また、彼女と目が合った。
おわり
五八一、心の片隅で
「うわ」
仕事の合間に窓を見ると外は真っ白でびっくりした。
道全てが雪で埋もれている訳じゃないけれど、これは帰るの大変そうだな。
いつもと変わらない喧騒の中なのに、雪によって密閉された感じと響かない空気がそこにあった。
仕事に集中して全然気が付かなかったけれど、確かに静けさを覚える。
そうして思い出す。
雪が積もったということは滑って怪我する人が増えると言うことだ。
この静けさはきっとすぐ終わる。
俺は事務仕事を切り上げて白衣をまとった。
おわり
五八〇、雪の静寂
きゅっ。
お腹あたりを軽く締められて目が覚めた。
背中に温もりを感じて身体を起こさないように振り返る。
甘えるのが得意じゃない恋人が俺の身体に抱きついている。
顔が見える訳じゃないけれど、起きているとは思えなくて俺は彼女のなすがままに抱き枕になった。
どんな夢を見ているのかな。
本当は正面から抱きしめてあげたいけれど、身体を動かしたら起こしちゃうかもしれない。
俺は彼女の手に自分の手を重ねる。
俺はずっと君のそばにいるからね。
おわり
五七九、君が見た夢
小さく唄っていたら、隣から恋人がジッと見つめてきた。
私は口を止めて首を傾げながら彼を見つめる。
その視線に熱を感じた。
「どうしました?」
「んー」
小さく呟きながら彼が私の肩に頭を乗せてくれる。
「置いてかないでね」
「ふえ!?」
どこか強ばった声にびっくりする。
どこか体温が冷たくなっている気がして、思わず彼を抱きしめた。
「大丈夫です」
少しだけ力を入れる。
「私はどこにも行きませんよ。明日も、これからもずっとそばにいます」
おわり
五七八、明日への光