お題:誰よりも
誰にでも親切で愛想のいい彼女。人間なら誰でも平等に優しい。
今日もまた他人に笑顔を向ける。
「こねこちゃん、機嫌悪い?」
彼女は俺をこねこちゃんと呼ぶ。そんなに可愛くない。意味わからない。
「…別に。」
素っ気ない態度をついしてしまう。…こんなだといつか愛想尽かされてしまうかも。
「チョコあげる。ほら、あーんして?」
彼女はイタズラっぽく笑ってチョコを取り出す。彼女はよく俺の反応を見て楽しんでいる。
「…こんな所でできない。誰かは見てる」
「残念だね」
彼女は早々に降参してチョコを俺の手のひらに乗っけた。
「じゃあ、またあとで」
彼女は去ろうとする。少し後悔した。
ああ、もう。いつもこうやって人の心を掻き乱す。
構ってきたと思ったらすぐ離れて。もう少し一緒に居たいのに。
誰よりも君と一緒に居たいんだ。
2月14日と言えばバレンタイン。誰かが意中の人にチョコレートを贈る日。
校内の男子たちはとてもそわそわしている。面白い。
「おはようございます!おねえさま❤︎」
私をおねえさまと呼び、慕う女の子がいる。その子はかわいらしくて快活な優等生で、…ちょっと変わった子。
「おはよう。何かいい事あった?」
「えへへ、あのですね…これ、おねえさまに!」
にこにこ笑顔のその手には綺麗にラッピングされた小さな箱が。
「私に?」
「はい!えっと、いつもお世話になっているので、お礼です」
ありがとうとお礼を言うと彼女は言葉を付け加えた。
「お返しとか別にいらないので!」
「えー?」
気を遣わないで、と言われても…じゃあこうしよう。
「後ろを見てごらん」
「?」
彼女は素直に後ろを向く。そこには何も無い。
疑問を持ちつつこちらを向き直ると違和感に気付いた。
「良い子にはお菓子をあげようね」
私は隙をついて梱包したクッキーを彼女の服のポケットの中に突っ込んでいたのだ。
「わー!いつの間に!」
「さぷらーいず」
彼女は驚いていた。その後すぐにお礼を言って笑っていた。とても素直で良い子。
人間の子から気持ちの籠った物を貰えるなんて素敵な事だと思わない?
あなたが幸せであるようにと願って
夢想
あなたが誰かと手を繋いで輪になって
私が救った花たちとも繋がって
いつか
いつか
あなたとまた出会う事ができたなら
咲いた花を見て
心に咲いた花。
あなたが何処かで生きている事を祈って
今日も私は歩き続ける
(祈りの果てにあるものは)
それは夜の事だった。
ガサガサと外で物音が聞こえた気がして、私は窓を見たのだった。
木陰が微かに揺れた。
何かの気配がある。
私は窓を開けて「こんばんは」と声をかけた。
するとそれに答えるかのように
「にゃー」
猫の鳴き声。そこにはグレーの毛色のかわいらしい猫がいた。
「どうしたの?お腹すいた?」
話しかけるが答えない。お腹は空いてはないようだ。
「困った事でもあるのかな?」
「うにゃ」
猫が軽やかに塀を登ってじっとこちらを見つめる。
「ついてけばいいの?」
猫の目はそうだと言っているかのように思った。
私は窓から身を乗り出して、外に出た!
この猫ちゃんはどこに私を連れて行ってくれるのかな?
少しのワクワクと小さな冒険を楽しむ事にするよ。
私の物語の始まりは刺激的な物でなければならない。
何故なら私は!
「おはおとはーと❤︎リスナー!みてるー?」
バズを狙うストリーマーだから!
「これから心霊スポットに行って、都市伝説の検証しちゃうよ〜!」
危険なのは承知の上!攻めなきゃ再生数は上がらない!
今日も私へのコメントが流れてる。コメントを返しながら都市伝説の検証をしてみる。
…なにも起こらない。
コメントの流れに変化があった。
『後ろ!』『何かついて来てる!』『逃げて!』
え?
後ろを振り向いた。
黒くて首の長い女の人がこちらを見下ろしていた。