"枯葉"
とある秋のこと。
時間はもう夕方で、辺りを紅色に染める太陽がいやに眩しかった。
左肩にトートバックを提げているが、ひどく重くて歩くたび肩に食い込んでいるのを感じる。
積読が底をつき、何冊か買えればいいと思い本屋へと立ち寄った。
だが、気になっていた本やどうしても手に入れたかった本
さらには、表紙に一目惚れしたものもあり結局、最終的に買った本は十数冊ほどになってしまった
予算オーバーも甚だしいが、嬉しさやら楽しさやらがぶち上がって涙まで出るほどだったので良しとする。
これこそ幸せの重みだと実感している。
そんな肩の痛みを噛み締めるようにふわふわとした足取りで歩いていると、ふと目の前をひらひらと落ちていくのを見た。
紅葉の枯葉。美しい掌状の葉が舞い散るのを見て右手で掴んでみる。
綺麗に紅く染ったそれは筆舌に尽くし難いほどに私の心を鷲掴みにして離さない。
心を打ち抜く音が聞こえてくる
新聞紙と沢山の本で挟んで、栞にしてしまおう
思いがけず私だけの素敵なお供が見つかり、更に舞い上がりそのまま帰路についた
"今日にさよなら"
輝く月夜の下で
星が降ってくるのを待っている
濃い雲の間をちらちらと小さな白がこちらをのぞいている
ぼやけた空が酷くもどかしい
眺めていると一等輝くそれを見つけた
じっと見つめれば点滅して動いているのに気付く
一瞬
冷たい風が私を覆い去っていったので
私は帰ってさよならをした
"お気に入り"
気に入った物というものは『ある』だけで落ち着く気がする。
気に入った色
気に入った音楽
気に入った本
気に入った食べ物
気に入った天気
気に入った場所
それらは私を証明するもの
私が安定して存在し続けることを実現させている。
そしてそれらを意図して定めなければ、無意識のうちに作ってしまった固定観念に縛られる事が無くなり物事をより一層、客観的に把握する事ができる。
それは私を不安定にさせ恐怖感を与えるが、視点を変えれば自由になるとも言い換えられる。
考え過ぎて我ながら意味の無い理論になってしまってとても恥ずかしいのですが…私はずっとこう思っていました。
私自身を構成するもの全ては、
有れば安心感を、無ければ自由を与えてくれるもの
"誰よりも"
誰よりも、愛していた。
たった6年、周りの同じように愛する人よりも断然少ない期間だったけれど、兎にも角にも私はそれを愛していた。
整った環境でそれを磨き上げる機会をもぎ取り
より深くそれを知る事ができた。
楽しかった。
ありえないほど大変だったが、好きだったから続けていたし、やればやるほど好きになった。
愛しているという気持ちには自信があった。
少なくとも、あいつよりもそれを愛していた
同級生のあいつ。無自覚のうちに私の邪魔をして
私を追い出したくせに被害者ヅラで泣き喚くあいつ。
反吐が出る。虫唾が走る。殺意が湧いた。
私の全てを奪ったあいつを、私は許さない。
誰よりも。
"10年後の私から届いた手紙"
静けさが恐ろしい夜だった。
ただ椅子に座り、静寂に身を任せて机のライトを見つめていた
目の前にはぐちゃぐちゃになった便箋と、インクの無くなったボールペン
痛い
乱暴に便箋を扱ったせいで浅いが手が切れていた
何がしたいのか
哀れな自らに同情して、侮蔑した。
ただ、ただ茫然として時間を無駄に浪費していた。
こんなことをして、何になる
御伽話に浮かされて、届いてほしいと希うなど抱腹絶倒。
愚かだ。
肺の澱んだ空気を一気に吐き出し
10年前へ届くことを祈って、ゴミ箱に放り出した