冬の晴れた日に、外をぶらぶら歩くのが好きだ。厚手のコートをまとい、マフラーと手袋でしっかりと温かくして歩く。顔にかかる風はとても冷たく、鼻先が赤くなっているかなと思う。
その場ですぐ忘れてしまうような、とりとめもない話をする。街の街路樹の葉はほとんど落ち、もう粉々になって、道の端に集まっている。木の枝は、よく見ると一つ一つに個性がある。
日が差して温かく見えるのに、ふと、顔に冷たいものがかかる。雪だ。小さな雪がちらちら、ちらちら落ちてきた。明るいのに雪? 初雪だと言いながら、なんとなくはしゃぎたくなる。
雪の額縁に彩られ、君の笑顔ももっとすてきに見える。こんな時間が続くといいのに。しばらく、この雪を楽しんでみよう。
「スノー」
昼間の明るい空もいいけれど、夜空は闇にまみれて、思いがすーっと飛んでいく気がする。
冬の冴えた空気がより遠くへと運んでいく。キラキラと輝く街の灯りに彩られて、その思いは遠くへ飛び立つだろう。
夜空を見上げながら、願いをこめて思いを飛ばしてみる。灯りをまといながら、見えるところから遠くの闇へ深い深いところを超えていく。そして、すーっとあなたのもとへ届くと思っている。
「夜空を超えて」
何が原因かわからないけれど、ずーんと落ち込むことがある。きっと小さな何かが一つ一つ心の奥に沈んでいって、それがいっぱいになった時、ああもう限界となる。
そんな時は、何もかもが刺々しく感じる。今日会った人、街で会う知らない人、お店で出会う人
、目に入る景色、自分、すべてがなじまない。もう、人としているのが嫌になって、どんよりと狭いグレーの世界に入っている。
とことんグレーの空気をまとっていると、ある時、ふぅっと抜け出すときがある。知らない人の何気ないひと言、たわいもない会話、接してくれた人の笑顔だったりする。
抵抗しても、温かいものがじわじわとグレーの世界に広がってくる。こんなに自分を含めて人は嫌と思っていたのに、人から感じるぬくもりは、悔しいほど効果てきめんだった。
「ぬくもりの記憶」
指先が出ていないと何かと不便なことがある。いちいち手袋を外すのが面倒で、指先が出ている手袋を買ってみた。甲の部分にカバーがついていて、被せると一見ミトンのようになる。必要な時は、カバーを外して手先を使う。
これはとても便利かもと思っていたのだけれど、なんだかカバーを被せても冷える気がする。指先の部分をスースーと風が抜ける感じがするのだ。素材のせいというわけでもなさそうだ。同じ素材の普通の手袋だと温かく感じる。やはり指先をぴったり覆わないと寒いのだろうか。
指先には、色々と繊細な感覚があるのかもしれない。そんなわけで、今はもとの普通の手袋を使っている。やっぱり五本の指一本一本がすっぽり覆われるのは、温かいのだなとあらためて思う。
「凍える指先」
雪は積もることもあったけれど、サラサラとした雪を見たのは、スキー場に行った時がはじめてだった。どこまでも続く白い雪。雪がこんなに眩しいということもはじめて知った。
サラサラと一粒一粒は軽いのに、踏み締めるとサクッサクッと硬い。リフトで登っていくと、さらにその奥は真っ白な世界が広がっていた。
日差しがさして、さらに眩しい。白く彩られた木々。山の勾配は雪で角がそがれ、ふんわりとした厚い層がずっと続く。その雪原の先に向けて、ぶらぶらした足をぐんと伸ばしてみる。白い世界にスキーの板ごと吸い込まれていきそうだった。
「雪原の先へ」