贈り物に、結ばれていたリボンは、捨てがたい。それが美しいだけでなく、結ばれてから、解かれるまでの短い役割を思うからかもしれない。
そんなリボンたちを、箱に入れている。たまに取り出して、何かに結んでみたり、ひもの代わりに使ってみたりする。中には、使うことはなく、しまってあるリボンもある。
大切な決断をした時に、もらったリボンは、小さな袋に入れてある。ひときわ白く、つやっとした光沢があった。あまりに美しかったのと、その時の気持ちを残すために、とっておいた。久しぶりに取り出すと、その色もつやも当時の輝きを失っている。
過ぎてきた長い年月を思う。リボンとしての役目はとうに過ぎている。でもまだ手放す気にはならない。もう少し一緒に時を重ねることにした。
「時を結ぶリボン」
暮れになると、ばたばたと忙しくなる。世の中が、クリスマスや忘年会なんかで、何かと賑やかなのを見ながら、せっせと目の前の仕事を片付ける。このごろはあっという間に日が暮れて、暗い時間がとても長い。
何となく夜のほうが仕事がはかどる。早くすませたよう。気付けば、もう周りには誰もいなくなっている。今帰ると色々な店もまだ営業しているだろう。少し気分転換をして帰ろうと思う。
下に降りると、ちょうど他のフロアの人と一緒になった。「遅いですね」と、思わず笑顔を交わす。お互い反対方向に出ようとすると、「あ、これ、よかったら」と小さな包みをポケットから出して、手のひらにのせてくれた。赤いリボンと小さなベルがついて、飴がいくつか入っていた。「取引先でもらって。どうぞ」そう言って、さっと帰っていった。
赤いリボンの色と色とりどりの飴を、しばらく眺めた。手のひらが、じんわりと温かくなったような気がした。
「手のひらの贈り物」
忘れてなんかいない。心の片隅でずっと残り続けている。あれからたくさんの日々が重なって、細かいことは、覚えてないかもしれない。
でも、それはずっと残っている。長い年月をかけて、都合がよいように書き換えられているかもしれないけれど。
たくさんの関わりは、心の引き出しに一つ一つしまわれている。時々ふっと出てくることもあれば、自分から見にいくこともある。
大切な引き出しだ。
「心の片隅で」
冬の寒い日には、あたたかい部屋で本を読むのが好きだ。図書館もいい。子どもの時は、図書館の大きなストーブの近くに行って、夢中になって本を読んだ。じんわりとしたぬくもりと、本の独特の匂いに包まれていた。
久しぶりに、大きな図書館に行った。あの独特の本の匂いがする。大きな机の一角に座って、本を読む。図書館でしか読めないような大きな辞典なんかも眺めてみる。
たくさん人はいるけれど、静かだ。まったくの無音ではない。そこにいる人の言葉にはならない思考に取り囲まれている。そういう空気も心地よかった。
ふと、外を見ると雪が舞っていた。うっすら積もり始めている。雪は、せわしなく動くのに静かだ。音を吸収する気がする。外からもすっぽりと静寂に包まれて、ページをめくる。
「雪の静寂」
夢から覚めた時、ああ夢かとがっかりすることがある。君が見た夢は、そんな感じだったらしい。でも、いつもと違うのは、夢の中で感じた思いがずっと残っている気がすることだ。
夢では、とても温かな気分になって、幸せだったそうだ。起こったことは、現実ではないけれど、その温かな気分だけは残って、今も心の中に広がっているのだと。
君は、何がが吹っ切れたようなすっきりした顔をしている。たとえ夢であっても、今の心が癒されたのなら、よかったと思う。どんな夢だったのと聞くと、私の顔を見て楽しそうに笑うだけで、教えてくれないのだけれど。
「君が見た夢」