枯葉
私の好きな人はよく紅葉を見に行く人でした。秋になれば私を毎週末誘って色んな場所の紅葉を見に行きました。しかし、私は枯葉なんかに一向に興味が湧きませんでした。青々と茂っている時には見向きもしないのに、枯れ落ちるときに人々はこぞって美しいと、もてはやす。その様子が私は嫌いでした。それでもあの人に付いて紅葉を見に行ったのはあの人を見るためでした。紅葉に目を奪われるあの人を私は目に焼き付けていました。あの人は私と同じくらいの背丈で横を見るとあの人の横顔をしっかりと見ることができました。けれど、紅葉は上にあるためあの人を見ていると不思議な顔をして私を見返されるのです。その顔が今でも忘れられません。あの人はよく、紅葉のような生き方をしたいと口にしていました。その真意は未だわかりません。しかし、美しく生きるのか色を変えながら生きるという意味だと今は考えています。ある日、あの人は私のもとを去りました。遠く離れた場所へいってしまいました。私はいつまでもあの人の隣であの人の人生が紅葉していくのを見ていたかったです。
再び会ったときにはあの人は紅葉のように紅くなり、枯葉のように冷たくなっていました。
今日にさよなら
嬉しかった思い出も悲しかった過去も、楽しかったあの日も辛くこの身に染み着いて離れない涙もあなたは一つずつ時間が経つにつれて忘れていってしまう。一緒に行こうと話した夜景、ずっと食べたいと言っていた料理、子供たちが私たちのもとから旅立つ日も、これからの予定を話し合ったことはゆっくりとあなたの頭から消えていくのかな。日を追うごとにあなたの記憶が溶けていく早さが増している。近いうちに私のこともあなたの頭からいなくなってしまうよね。私が勇気を出して告白した日からしっかりと紡いできた私たちの日々はあっけなく忘れ去られてしまうのかな。あなたの恋心も別れを告げられるてしまう。
私を忘れたあなたとあなたを忘れない私
あなたと生きた日々が、痛みが私の胸に残り続ける限り私はあなたを忘れずに居られる。
あなたが私を忘れる日は明日かもしれない。私がどれだけ足掻いても明日は何食わぬ顔してこんにちはと言ってくるの。
その挨拶を聞く度に私は、今日にさよならをする。
お気に入り
あなたといつまでも話していたい。けれど、そういうわけにはいかない。あなたは眠るし、バイトにも行く。ご飯を食べるし、スマホを触らない時なんていくらでもある。でも、私はあなたのことをいつも考えていたい。だから、あなたの連絡先はいつも見える"お気に入り"にある。
誰よりも
あなたと仲の良い人はあなたの周りにはたくさんいるでしょう。
あなたを嫌っている人はあなたの少し遠くにちらほらいるでしょう。
あなたを好いている人はあなたの周りにポツポツといるでしょう。
でも、あなたを誰よりも愛している人は私以外いない。
10年後の私から届いた手紙
今日は珍しく私のカレンダーに予定が入っていた。「高校同窓会」と書かれたカレンダーを私は見ながら懐かしい青春時代を思い浮かべた。10年後は今と比べても何も変わらないとあの頃は思っていたが、その予想は外れていた。大人になるということを社会に出て思い知らされた。責任という二文字はどんなときにも私に付きまとい、自由という言葉に時折姿を変え、私の前に現れる時もあった。昔のように何かを始める好奇心は胸の奥底へと眠りにつき、現状維持というワードが頭から離れなくなっていた。現状維持、それはきっと今のままで良いのではなく、今のままが良いと私が選んだ結果だと思える。大切にしたい家庭があり、守りたい人がいる。同窓会ではそんなことを痛感した。私のクラスはタイムカプセルを10年前に埋めていたらしい。カプセルの中には10年後の自分宛の手紙が全員分入っていた。私は不意に怖くなった。あの頃の自分が望む10年後の自分になれていたか不安になった。少年の心を持っていたあの頃をしっかりと目を開け見ることができるのか心配になった。帰り道を歩く私はずっと手紙を手に持ちながら、不安感に襲われていた。手に持て余すほどの若さを持っているこの手紙を私はついに手放した。二度と見ることのないように散り散りに破き、夜空へと逃がした。風に舞う紙が星のように眼に映った。青春は私の心の中へと仕舞い、私はあなたのもとへと帰った。