金盞花

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2/20/2026, 8:28:46 PM

「同情」
教室に入ると賑やかだった声が止まる。
見られている。
そう感じながらも自分の席につく。
何事も無かったように教室が声で溢れる。
そんな中近づいてくるクラスの人気者。
「ねぇ大丈夫だった?」
笑みを抑えたような心配顔で聞いてくる。
昨日の葬儀でも親戚が同じ顔をしていた。
同情という仮面を纏い好奇心を満たす為に近づいて来る者ばかり。
その仮面を叩き割れない私は「大丈夫」と微笑み返すしか出来なかった。

11/6/2025, 3:06:50 AM

「時を止めて」
とても寒い冬が明け、淡いピンクの桜の花が咲き始めている。
遠くで共に卒業したクラスメイトの賑やかな声が響く。
その中に聞きたかった声は混ざっていない。
今日でもう会えなくなってしまうあなたを探して群衆に飛び込む。
ふと窓を見ると、目を見開いたあなたと目が合う。
ああ、やっとあなたと目があった。
屋上に置かれた黒い筒の中に詰め込こまれた卒業証書と卒業アルバム、履き潰したローファーとあなたへの手紙を残し、僕は春に似合わない赤い花を校舎に咲かす。

11/5/2025, 2:55:47 AM

「キンモクセイ」
教室の隅にそっと咲いている一輪の花。
賑やかな蝶たちはその美しい花には目もくれない。
花からは頭が痺れるような甘い香りが漂う。
嫌われ者の僕だけが知るその気高い香りに今日も酔いしれる。

11/3/2025, 10:12:37 PM

「行かないでと、願ったのに」
年が明け新年とお年玉と少しの雪と、友人のと思い出話に心を踊らせ校門を潜る。
新年の挨拶が飛び交う中未だ誰もいない机を眺め席に着く。
友人よりも先に教室に入ってきた担任の表情は楽しげな教室とは真逆のものだった。
「友人が死んだ」
その一言で1月の気温よりも凍りつく教室。
冗談はやめろと笑う者。呆然とする者。泣き崩れる者。
そんなカオスな教室の中私は友人との約束を思い出していた。
「一緒に部活頑張ろうね!嫌なことがあってもずっと一緒だよ!私たち友達なんだから!」