辛いこと

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2/19/2026, 11:28:42 AM

ーお母さんの花ー(枯葉)

僕はいつの間にか、沢山の兄弟の上に重なっていた。
あれ?
いつ落ちたんだろう。
立派に根を張っているお母さんを見た。
お母さん、僕落ちちゃった。

くしゃ

痛い。
痛かった。
なんだ?

上には大きな人間。
あれ?
僕の方が高かったのに。

そいつは何度も僕を踏んだ。
痛い、痛いよお母さん。
助けて。

あれ?
お母さんって、なんだっけ?
何だったけ、それ。
なんの「名前」?

くしゃ

そもそも「名前」ってなんだっけ。
「お母さん」っていったい、何を指す言葉なんだ?

くしゃ

痛い。
酷い。
どうして僕は、…あれ?
僕ってなんだ。
どうしてここにいるんだ?

くしゃ

そう、僕は葉っぱ。
なんで、思考できてるんだろう。
僕のこの意識は、一体どこから?

くしゃ

ふわっ

別の何かが、僕に触れた。
あ、これ、お母さんの、子供。

綺麗に形が残っている。
もう閉じない花弁は、少し切なさを持っていた。

春に、落ちたんだ。
これ。
一気にぼんって咲いて、綺麗だったな。

濃いピンク色がとても、印象に残っている。
あれ?
そういえば僕って、いつからここにいるんだっけ。
いつから、意識があったんだっけ。

僕は知っている。

「お母さん」の花と一緒に、そこで見えた景色を。
それを、下から見たときの景色も。
僕の意識は、誰のものなんだ?

くしゃ

視点が高くなった。

―――――
おやすみなさい。20:28

2/18/2026, 11:00:14 AM

ー更新ー(今日にさよなら)

今日も、眠れないまま、
日にちが変わるのを確認する。

時計の針が、急かすように音を立てていた。

嫌だな。
どうせすぐに、朝が来る。

12時から6時まで。
長いようで短い時間に、ため息をついた。

どうして、一日は、24時間しかないんだろう。
いろいろやって、帰ってきて、一瞬で寝て、また繰り返す。
なんて嫌な定義だろう。
でも、もしも一日が30時間あったとして、私たちの眠る時間は変化するのだろうか。

私はぼうっと、日付が変わるのを待っていた。
さよなら、今日。
はじめまして明日。

時計が12時を指した。
昨日の私が、今日の私に生まれ変わる。

…あー、いま寝ても、どうせ寝不足だ。

まぶたが重い。
重いはずなのに、眠れない。

それならいっそ、進めなきゃいけないことをやっちゃおうかな。
でも、そんな事をする気にはならない。
やらなきゃいけない。
それはそうなんだけど…。

もっと夜が延びればいいのに。
そう思った。

――――――――――――――――――
今日は短めです。
おやすみなさい。20:00

2/17/2026, 11:30:02 AM

ーなくなった日ー(お気に入り)

誕生日。

あたしは買われた。
知らない子に。

あたしはね、
その子をとっても、かわいいと思ったの。
あたしを買ったのが、この子で良かった。
あの子言ったのよ。

「ずっと一緒にいるからね」

って。
それから、本当にずっと一緒だった。
一緒に外に連れられて、
一緒のベッドに入って。
手からはずっと、あの子の体温が伝わってきてた。

あたし、この子大好きだわ。
あたしのこと、大切にしてくれるもの。
ずっと一緒にいましょうね。

―――――

あたしは、いつもみたいに、机の上で、その子が学校から帰ってくるのを待っていたの。
いつもみたいに、勢いよくドアが開く。
いつもみたいに、あの子はあたしを抱き上げて、優しくぎゅっとするの。
でも、今日は少し違った。

その子の腕に、知らないお人形がいたのよ。
あたしよりはずっと雑な顔だったけど、
その子はその日、知らないお人形をずっと持って、
あたしは、ずっと、机の上…。

次の日、その子はあたしと知らないお人形を遊ばせた。
あたし、ほっとしたわ。

…まだこの子の一番は、あたしなのよね?

あの子はだんだん、あたしを連れ出さなくなった。
あの子の手に握られているのは、あたしじゃない。

あの子はあたしに話しかけなくなった。
あの子はあたしを、抱きしめてくれなくなった。

あたし、気づいたの。
だんだん、体が透けてることに。
縫い目よりも奥の、あたしの中が。
あたしの中に詰まった綿は、ふわふわ揺れていたわ。

あたしの可愛い声も、がらがらになってた。
こんなんじゃ、あの子に嫌がられちゃう!
どうしよう。
あたし、どうなっちゃうの?

今日もあたしは机の上で一夜を越した。
あたしはもう、限界だったの。
その子が学校に行った後、ついね、感情が溢れてきちゃった。

「あたしが一番だったのに…。毎日一緒にお布団に入って、お散歩に行って、お話をして!あたしが、あの子の一番だったのに…。」

涙が溢れてきた。
あたしの体が濡れていく。
綿は相変わらず、ずっとふわふわ揺れてたわ。
でも、少し湿ってた。

あーあ。
もう、あの子に嫌われちゃうわね。

…どうして、あたしじゃないの?

―――――

帰ってきたその子は、あたしが濡れているのを見て、お母様に言いつけたわ。
あたしは洗われた。
「汚いわね」って言われて、とっても乱暴にね。

爪が食い込んで、
糸が引っ張られて、
あたしの中の綿は少しずつ偏っていった。
あたしの中の綿が、減っている気がする。

あたしはすっかり乾いて、あの子の前に戻ったけど、
あの子は私を押し入れにいれた。
光が消える。
それが、あの子からの拒絶に見えた。

罰なのかしら。
当たり前よね、嫌なこと言ったもの。

あたしはもう、可愛くない。
体が、見えなくなっていく。
綿はもう、揺れていない。
まるで眠っちゃったみたいに。

ごめんなさい。
お願いだからどうか、あの子の記憶には、残りますように。

あたしのこと、なくさないでね。

――――――――――――――――――
今日は早く書けました!なんかめっちゃ楽しかったです。
おやすみなさい。20:30

2/16/2026, 12:15:10 PM

ー上書きー(誰よりも)

双子の妹は、いつも後ろについてきていた。
どんな事でも、必ず私に助けを求めてくる。
「おねーちゃん。これやって!」
生まれた時間なんて、数時間しか変わらないのに…。
それが少しウザったく、嬉しくもあった。

妹に変化があったのは、私たちが高校に上がった時だった。

妹は、いつの間にかクラスの中心にいた。
昔とはまるで違った。
私の後ろには、もう誰もいない。

「もう一人で、大丈夫みたいだね」

ある時私は、妹にそう言った。
そこには少し、嫌味が混じっていたように思う。

妹は一瞬、妙な顔をした。
褒められたのか、突き放されたのか、判断できないみたいな顔。
それから少し、泣きそうな顔になったのを、私は忘れられない。

妹はそれっきり、私に頼らなくなった。
宿題も、委員会も、部活も。

変わりに、
私を真似るようになった。

言い回し。
細かい癖。
字の筆跡。

「それ、私の真似?」

そう聞いた時、妹は笑った。

「だって、おねーちゃんのやり方が一番うまくいくんでしょ?」

その笑顔が、少しだけ、私より私らしく見えた。

―――――
それから妹は、髪型を私と揃えた。
ボブにしたのだ。
お母さんたちには

「お揃いで、もっとかわいい」

なんて言われたが、私は少し、嫌だった。

それからは、間違われることが増えた。
妹の友達に声をかけられることはしょっちゅう。
先生からも、

「妹さんに似てるね」

なんて言われてしまう。
その度に私は複雑な気分になった。

―――――
妹とお母さんは、二人きりで話すことが増えた。
私には内緒で。

「前は、私だったのに」

そう呟いて、ふと思った。
妹も、こんな感じだったのかなと。

―――――
「お姉ちゃん」

母が、私を呼んだ。
久しぶりの、懐かしい言葉に、私は振り返った。

「え?」

母は私を見て、奥に目をやった。
奥では妹がテレビを見ている。

「あらやだ、私ったら…。ごめんなさいね?最近、あの子の方が、お姉ちゃんみたいだから。“昔のあなた”みたい…」

私は理解した。
母は妹を呼ぶつもりで、「お姉ちゃん」と言ったのだと。
熱いものが、こみ上げてくる。

「あ、うん。大丈夫。気にしないで」

“昔のあなた”。
母の言葉が引っかかる。
それでも、特に突っ込まず、私は笑った。
母はそれにおかしそうな顔をして、こう言った。

「あなたたち、そっくりね。笑い方が。ふふっ。妹ちゃん“みたい”」

「え?」

今度は、言葉が漏れた。
母は不思議そうな顔をする。

「どうしたの?」

「…なんでもない」

あなたは私の、母親として…。

そう言葉にしてしまわないように、必死に飲み込んだ。
本当は今すぐにでもぶちまけてしまいたい。
でも、無垢な目をする母親に、何かを言うことなどできなかった。

―――――
「実は、昔“妹”を助けたことがあってね。」

廊下。
妹の声が聞こえて立ち止まった。
たしかに今、“妹”と、そう聞こえた気がする。

「“妹”が、プールで溺れそうになってるところに、私が飛び込んで助けたんだよね。その時は、死ぬかと思ったな」

妹がはにかむ。
その話は…私の。
妹の友達が言う。

「凄いね!“頼れるお姉ちゃん”なんだ!その、“妹”ちゃんとは話してる?」

話してないし、
そもそもその話は私の話で、
“お姉ちゃん”は私だし。

妹は、笑った。

「話してるよ。おねーちゃんとして」

妹の声が、耳の奥にこびりついていくようだ。
私の記憶なんかよりもずっと、妹の言葉のほうが正しい気がする。

―――――
こみ上げてきた吐き気に、急いでトイレに向かった。

「げほっ、ゴホッゴホッ」

便器の中に、異物が溜まっていく。
流れ出てくる吐瀉物は、今までの私の記憶のよう。
何度もえずいて、
吐き出した。
それでもずっと、喉の奥につっかえているようだった。
今まで言えなかった、言葉みたいに。

あれ?
私って、お姉ちゃんなんだっけ。
それとも、妹?

吐瀉物を流してから、口をすすごうと鏡の前に移動する。
そこには、いつもの私の顔。
でも、私じゃないみたいだった。

「私って……」

ぶくぶくと口をすすぐ。
何度も、
何度も。
なにもかも、受け入れられればいいと願った。
そして、それが私の当たり前になればいいとも。

トイレを出る。
トイレの前には、妹が立っていた。

妹は、しとやかに笑う。
しかしそこには、あふれ出す感情があった。
目が、怖い。

「大丈夫?」

久しぶりに話す。
なのに、久しぶりのような気がしない。

妹の目の中で、私の輪郭が、少しだけずれていた。

ねえ。
私は、誰よりも、
誰だったんだっけ。

――――――――――――――――――
今日も書き切りました!誤字ないと良いんですが…。少し分かりにくかったですかね…?
おやすみなさい。21:15

2/15/2026, 12:25:13 PM

ーあなたへー(十年後の私から届いた手紙)

ガチャ

玄関のドアを引く。朝の風が、気持ちよかった。

私は毎朝、ポストに届いているものがないか、確認する。今日も、ポストの蓋を開いた。

一通の手紙がある。

封筒の表には大きく、「十年後の私へ」と書かれている。

その字は、私に似ていた。

______

玄関の鍵を閉めてから、ソファに座って、封筒を開いた。

中には一枚の紙。

ズラッと文字が並んでいた。

―――――

“十年前の私へ”

元気にしてる?十年後のあなたは元気だよ〜。まだちょくちょく智美(ともみ)とも会ったりしてる。仲良しだから、安心してね。

―――――

智美とは、誰のことだろうか?

―――――

最近よく思い出すんだ。“思い出の場所”。桜の木の下で、初めて告白した時。緊張したな〜。放課後に呼び出してさ、相手も緊張してたよね笑。今はちゃんと夫婦やってるよ!

―――――

“放課後に呼び出した。”その言葉が引っかかった。放課後じゃなくて、一緒に帰ってる時じゃなかったっけ?
……まぁ、この手紙はいたずらなんだろう。

―――――

あとさ、ペットを飼いたいって思ってたよね。実は私、クリスマスの前の日に、ペットがほしいって言ってみたんだけど、そしたらなんと!ペットショップに行くことになったんだよね〜。最終的には、かわいい子が見つかってさ〜。

―――――

私は、たしかにペットが欲しかった。でもそれは、捨てられちゃった子が欲しかったのであって、ペットショップにいる子が欲しかったわけじゃない。どういうことだ?
この話を、誰かに話したことはない。……全身にじわっと何かが広がった。

―――――

私、今すごく幸せ んだよね。でも、それは私が人じゃ かったか なの。

―――――

文字が擦れて読めなくなっていた。“人”?

―――――

私、どこ 間違えたんだろ。

―――――

ここも、擦れている。というか、消されたような…。うっすらとあとがあるような気がする。耳の奥で、何か聞こえた。

―――――

さて、ここまで読んでくれてありがとう。実は私、やり直したいんだよね。

―――――

ゾワッとした。私の影と同じ場所から、少し大きな影が、かぶさっているのに気づく。

―――――

でね、あなたのこと、のっとったらいいかなって。

―――――

“のっとる”?

―――――

大丈夫。あなたより幸せになるから。安心してね。

―――――

影は、私が読み終わるのを待っていたように、急に大きくなった。私は走った。玄関まで、一直線に。確実に、何かが来ている。そんな気配を感じながら。
玄関のドアを引いて、外に出る。はずだった。

「なに!?なんで開かないの?やだ!!」

ガチャガチャやっている時に、鍵が閉まっているのに気がついた。いつ閉めたっけ。なんで閉めちゃったんだろう。
指が滑る。うまく回せない。胸が詰まる。喉に熱いものがこみ上げてくる。

耳元で、呼吸音が聞こえた。

――――――――――――――――――
実は、玄関の鍵が開かないとこ。ちゃんと伏線張ってあったんですよ〜。気づきましたか?あと、怖いの苦手な人ごめんなさい!最初に提示しないほうが、びっくりするかなって思ったんです…。
おやすみなさい。21時25分

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