『心の片隅で』
友人が死んだ。原因は自殺だったらしい。
普段からメソメソしてて、
僕がそばにいないとずっと泣いているようなやつだった。
最近笑うようになって、好きなことが楽しくなったり
「ご飯の味がより感じれるようになった。」
なんて嬉しそうに報告してくれた。それなのに...
目だけでクラスメイトを見渡す。
なにかバツが悪そうに下を向いている。
...多方そういうことだな。
友人がイジメられているのにはもしかしてとは思っていた。
ただ僕は自分から聞くことはしなかった。
だってもしそれが本当だったなら僕は
君になんて声をかければいいかわからなかっただろうから...
今更後悔したってもう遅いか。
ごめんね。僕がいないと今も寂しい思いをしているよね。
今、そっち行くから少し待っててね。
語り部シルヴァ
『雪の静寂』
雪が降るとどうしてこうも静かになるのか。
いつ吹く北風も野犬の遠吠えも全然聞こえない。
部屋のストーブの上に置いてある
ヤカンの水が沸騰してる音だけが静寂を打ち消している。
それなのに沸騰してる音が聞こえているのに
「"静か"」と感じてしまう。
コタツの熱とストーブの熱。
静かで...暖かい。
みかんの皮を剥く速度がどんどんゆっくりになる。
もう既にウトウトして寝てしまいそうだ。
首の踏ん張りが...限界...
そのまま勢いよく額をテーブルにぶつける。
「...っ」おかげで目が覚めた。
額をぶつけた音ですら静かな空間に飲み込まれた気がする。
語り部シルヴァ
『君が見た夢』
夜更かしをしすぎてそろそろ寝ようかと
布団に潜ろうとしたとき、君から着信が来た。
いつもの君ならひと声かけるのに珍しい...
そう思いながら電話に出る。
「もしもし?」
「もしもし、夜中にごめんね。」
「ううん、全然大丈夫だよ。少し深呼吸して...
落ち着いたら聞かせてよ。」
鼻声の君を落ち着かせながら
溢れる涙を抑える声を電話越しに聞く。
少し経って落ち着いた君が話し始める。
「目が覚めたら君が隣にいなくて、
そもそも君がこの世界にいない夢をみたの。」
寂しくて泣いてしまったか...申し訳ないけど
そんな君も可愛いと感じてしまったのは言えないな...
そんな雑念を振り払い君を慰める。
「そっか...寂しかったんだね。大丈夫だy」
「違うの。」
慰めようとすると君が僕の声に割り込む勢いで答える。
する時また涙を流し声を押し殺す声が聞こえた。
「違うの。
そんな世界に対して寂しいとか何も感じ無かったの。」
落ち着くまで待てなかった君は
感情に任せるように僕にそう言った。
語り部シルヴァ
『明日への光』
あと一分。あと一分で日付が変わる。
だからと言って世界が変わる訳でもなく
ゲームのように暗転したと思えば外が明るくなる訳じゃない。
ただただ日付が変わるだけ。
それでも日付の境界線というものはどこか心に変化を感じる。
明日が仕事だと早く寝なきゃと焦るし
休日だとまだ起きていられる安心感がある。
さて...明日は仕事。
全く来てくれない眠気。
リモコンを無くして
わざわざ壁のスイッチを押さないと消せないルームライト。
そう思っている内に日付は
とっくに変わり10分ほど過ぎていた。
今日という日は
眩しく光るルームライトに当てられて始まった。
...早く寝ないと。
語り部シルヴァ
『星になる』
目を覚ますと身体が軽い。
ずっと凝ってた肩も引きずるように歩いていた足も妙に軽い。
今ならどこでもひとっ飛びできそうだ。
試しに実家へ...!と思ったが
いつもの走る速度と変わらなさそうだ。
...そもそもここはどこだ?
真っ暗で何も見えない。
進むとドアから光が少し漏れていた。
抜けると...火葬場だった。
あぁ、そういう事か。
納得した途端に身体がふわふわと浮き始める。
死人は星になる。
よく言われるセリフだったけど
実際こんな感じになるんだな。
僕は弱い。だから星になっても輝きが弱いかもしれない。
けれど...綺麗な色に輝けると嬉しいな。
お昼時の昼寝をするようにまぶたが
ゆっくりと閉じてきた。
語り部シルヴァ