水瀬しろ

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12/7/2025, 3:28:35 AM

「消えない灯り」

どうして消えないのだろう……
タイトルを見た時ふとそう思った

家の灯りや街灯は朝になれば消えてしまう
ならば「消えない灯り」って何なのだろうか

気になって窓から夜の街を眺めてみる
灯りがついている場所を探す

多くは街灯やマンションの渡り廊下の灯りであったが
一箇所だけ雰囲気の違う建物を見つけた

病院だ

調べてみると夜の病院の灯りはナースステーションやICU・救急外来の灯りらしい

ここで少し「消えない灯り」の意味がわかった気がした
それは誰かに必要とされているから消えないのではないかと

消えてしまったら そこで終わってしまう

「消えない灯り」
当たり前のように私たちを照らす灯り
だけどもしかしたらその灯りは、誰かの救いになっているのかもしれない


「消えない灯り」

12/5/2025, 11:44:57 AM

これは、とある日の夜の話である。

その日はあまり元気がなかったことを覚えている。
その様子を見ていたお父さんが「少し出かけるぞ」と言って、半ば強引に車へ連れて行った。言われるがままに助手席に座り、シートベルトを締める。

「どこ行くの?」と聞いても、「いいから乗っていなさい」と言うばかり。
だからといって、元気のない理由を聞いてくるわけでもない。車内にはただ静寂だけが流れていた。

しばらくして窓の外を見ると、いつもはあまり通らない国道に向かっていることに気づいた。この道は東西に隣の県まで続く長い一本道だ。夜の国道は帰宅ラッシュと重なり、少し混んでいた。
それでも車内の静けさは変わらなかった。

やがてウインカーが点滅し、車は細い道へ入っていった。知らない道だ。どんどん森の中へ進んでいく。さっきまでの渋滞の明るさとは打って変わって、辺りは真っ暗だった。
それでも車は止まらない。

坂道に差し掛かった頃、僕は急に不安になった。
お父さんが何を考えているのかわからない。
隣を見ても、運転に集中していて何も言わない。

うねうねした道を上り、本格的に山に入っていくのがわかった。
こんな場所に来て、何をしたいんだろう。
もしかして、知らないうちに何か悪いことでもしたのだろうか。
これはその報復なのでは——なんて、考えたくもないことが頭をよぎった。

そんなことを考えているうちに、急に車は開けた駐車場へ出た。電灯があり、周囲が少し明るい。車を止めると、「降りるぞ」とだけ言われた。

不安を抱えつつもドアを閉め、お父さんの後をついていく。駐車場は並木に囲まれ、他にも1〜2台だけ車が止まっていた。
その奥に、歩行者用の細い道が続いている。

並木の隙間から道へ出た瞬間、思わず息を呑んだ。
足が勝手に前へ出る。

——街だ。

果てしなく光る夜景、立ち並ぶビル、ピカピカと輝くテレビ塔。
そして、光を帯びて走り去る新幹線。

そこには、隣街の夜景が広がっていた。
こんな場所に、こんな景色があったなんて。
言葉も出ないまま、ただ夢中で眺めていた。

周りにも同じように夜景を見に来た人たちがいる。だからさっき、車が止まっていたのだとわかった。

どれくらい時間が経っただろう。
しばらくしてお父さんが隣に戻ってきて、ミルクティーの缶を2つ持って僕に手渡してきた。

「どうだ、この景色。」

「すごいね、これ。」

「お父さん、昔な。ちょっと辛いことがあったときによくここに来てたんだ。」

「……だから連れてきてくれたの?」

「何があったのか、詳しいことまではわからん。でもな、生きてりゃ色んなことがある。たまにはこうして、リフレッシュもしておかんとな。」

そう言って近くのベンチに腰をかけ、
カチッ、とミルクティーの蓋を開けた。

その音を聞いた瞬間、僕はようやく気づいた。
お父さんは不器用ながらも、ずっと僕を励まそうとしてくれていたのだ。
どこへ行くかくらい事前に言ってくれてもよかったのにと思ったが、きっとこれがお父さんなりの優しさなのだろう。
お父さんはいつもそうだ。肝心なことは聞かない。でも、心配はしてくれる。

胸の奥がふわっと温かくなった。

これからも、きっと下を向いてしまうことがある。
気づかないうちに限界を迎えてしまう日もあるかもしれない。

でもそんな時は——またここへ来よう。
この街の光にもう一度会いに来よう。

月明かりは、どこまでもきらめく街並みを静かに照らしていた。


「きらめく街並み」

12/4/2025, 1:27:17 AM

「さむっ。」

校門を出た瞬間、思わず呟いた。

「いやそれなー。マジで寒いよね、最近。」

「手袋とマフラーないと、本当むりぃ。」

「本当そうだよね。私も今日ダウン着てきた。」

「え、いいなー。暖かそう!」

「でしょー。お母さんに新しく買ってもらったんだよねー。」

そんなたわいもない会話を交わしながら、私たちは駅へ向かって歩く。
冷たい空気が肌を刺し、アスファルトからは湿った匂いがふわりと立ちのぼる。来週には雪が降り始めるらしい。いよいよ冷え込みが厳しくなってきて、本格的に寒さ対策をしなければならない季節だ。

吹きつける風にマフラーが揺れ、思わず首をすくめる。寒いのは苦手だ。かといって暑がりでもない。ただ毎年のように思う。急に寒くなるのだけは、本当にやめてほしい。せめて少しずつ、ゆっくりと冷えていってくれればいいのに――そう願うばかりだった。

冬の足音はもうすぐそこまで近づいている。
冬の匂いがする。
雪が降ったら何をしよう?
曇りがかった空から夕日が差し込んでいた


「冬の足音」

12/1/2025, 11:38:54 AM

20時34分

予備校を終え、駅まで歩く。
12月に入り、いよいよ手袋やマフラーが欠かせなくなってきた。息はもうとっくに白い。すれ違う人も皆、ポケットに手を突っ込んだり、ダウンに首をすくめたりしている。朝の天気予報によると、来週から雪が降るらしい。お父さんは雪に備えて早めにスタッドレスに変えていた。お母さんもお父さんに言われて変えていたが、本人は「まだ平気そうな感じ」だった。もしこんな時期にスリップ事故なんて起こされたら困るから、しっかりしてほしい。ここ数年は寒波が襲い、大雪が続いている。この冬も平年より積雪量が多くなると予想されているらしい。今年もまた、あの大雪を経験しないといけないのかと思うと、少し憂鬱になる。

そんなことを考えながら歩いていると、正面から小学生くらいの兄と妹と両親の家族が歩いてきた。おそらく外食帰りだろう。妹が母親の手をゆらゆらと揺らしながら楽しそうにしている。距離が縮まると、兄妹の会話が聞こえてきた。

「お兄ちゃん、今日ね、流れ星が見えるんだって!学校で先生が言ってたの!」

「へぇー、そうなんだ。帰ったら一緒に見てみよっか。」

「2人とも、今日は寒いからまた明日にしなさい。」

兄妹の会話に割り込むように母親が言う。

「えぇー、今日がいーい。」

「まあまあ、いいじゃないか。お父さんが見守っててあげるから。」

父親が明るく言う。

「ちょっとあなた。この子たちが風邪ひいたらどうするのよ。」

「暖かくしてれば大丈夫さ。お父さんだって小さい頃、星が好きでよく見てたんだぞ。」

そのあとまでは聞き取れなかった。おそらく、ふたご座流星群の話だろう。中学までは星が好きで、よくプラネタリウムに連れて行ってもらったり、外で星を眺めたりしていた。しかし高校に入ってからは勉強や部活に追われて、気づいたら興味が薄れていた。会話が完全に途切れ、再び静かになる。気づけば風も出てきていた。立ち止まって手袋をはめ直し、マフラーを少し上げた。夜空を見上げてみたが、流れ星は流れなかった。遠ざけていたはずの夜空は鮮明で、星々が輝いている。それだけ空気が凍てついているということだ。吐いた息は白く、一瞬で夜空に消える。手袋をしっかりはめ直したはずなのに、手は少しずつ冷たくなってきている。気がつけば、昔のように夜空を眺め、星を追っていた。冷たくて遠くて綺麗で、そして優しい空は何も変わっていなかった。星を眺めるにはまだ寒い季節だけれど、暖かい季節になったら、その時はまた夜空を見上げる日々がやってくるのかもしれない。

そう思い、再び歩き出した。
月明かりは少し眩しく、夜空を優しく照らしていた。


「凍てつく夜空」

11/29/2025, 2:15:57 AM

朝日の眩しさで目が覚めた

うぅ……という低い呻き声と共に重たい身体を横向きに転がす。半開きの視界と指先の感覚でスマホを探し、時計を確認する。

「朝か…」

このまま2度寝したい気分だったが、今日は授業があったため、その誘惑はそっと押し退けた。
窓を開けると冷たいそよ風が吹き込んだ。目覚ましには少し寒いけど、私はこれくらいの方が好きだったりする。辺りを見渡すと庭が一面霞がかったような淡く白くなっているのがわかった。一目見た瞬間、冬の始まりを感じさせる景色だった。

「霜だ。」

そう呟いて窓を閉める。ずっと当たっているには、さすがに寒い風だ。まだ寝ぼけた身体を起こすため、眠い目をこすりながら顔を洗いに洗面所へ向かった。最近は水も冷たくなってきたため、お湯を使うようになった。タオルで顔を拭き取り、ふぅっと一息つく。顔に残った僅かな水が目を覚ましてくれる。
いつもはここから身支度に入るのだが、今日は少し時間に余裕があったため、コーヒーを淹れることにした。有名なコーヒーチェーン店で買ったフィルターのコーヒーにお湯を注ぐ。とく、とくという音と共にコーヒーの深く甘い香りが広がった。この香りがたまらなく心地良い。お湯を注ぎ終え、マグカップを手にリビングへ向かう。まだ熱いコーヒーを飲みながら外を眺めた。さすがにもう寒くて窓は開けられなかった。

「そうか、もうこんな季節か。」

カップの温もりと口に残ったほのかなコーヒーの苦味を感じながら、まだ少し残る眠気と共に庭を眺める。霜の白さと朝日が今日の始まりを告げる。今日も頑張るかと小さく一息つき、冬の朝に身を任せた。


「霜降る朝」

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