かたいなか

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12/18/2025, 6:20:42 AM

前回投稿分から続くおはなし。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
そこの経理部は形式的に、皆みんな、猫のビジネスネームを貸与されておりました。

その経理部所属のマンチカンがお題回収役でして。

「強くなりたい……ぼくも、強くなりたい!」
実はマンチカンの勤務する管理局、
管理局を推しの仇ほどに憎む組織、世界多様性機構の構成員によって、不定期に襲撃されるのですが、
前々回投稿分あたりで、まさかの経理部が襲撃の実害を被りまして。

捕まった犯人に八つ当たりパンチを食らわせると
犯人はちっとも痛がらず、逆にドストレートに
おまえ非力だな?
なんて言われてしまったのでした。

これがマンチカンにフェイタルヒットしたようで。

結果、同じ経理部のほぼほぼ最強枠、
万年コタツムリのエンジニア、
スフィンクスに、直談判です。

「スフィンクスさん!スフィンクスさん!」
仕事中に不思議なボタンを押して、スポンスポン、
カゴの上にミカンを召喚しているスフィンクスに、
非力マンチカン、言いました。
「僕も強くなりたい!
僕を、弟子にしてください!」

「ムリ」
召喚したミカンを剥いてポイポイ。
口に放り込むスフィンクスが即答しました。
「俺様、子分は募集中だけど弟子はとらねぇの。
強くなりてぇならキリンにでも頼みな」

はいバイバイ。
1敗のマンチカンはしょんぼり。
雪の静寂の中に、ぽつん、ひとり放り出されたような気分でありました(お題回収)

でもスフィンクスの言う通りかもしれません。

次にマンチカン、環境整備部に勤めている、
空間管理課のイケボマッチョさん、
キリンというビジネスネームの男性に直談判です。

「キリンさん!キリンさん!」
仕事が終わってプロテインなど飲むキリンに、
非力マンチカン、言いました。
「僕も強くなりたい!
僕を、弟子にしてください!」

「共に鍛錬をする分には、私も構わないが、」
ただただチカラを求めるマンチカンが、イケボキリンは少しだけ、心配です。
「まず、マンチくん。君は自分が、『どのような強さ』が欲しいのかを考えるべきだ。
ツバメ副部長に相談すると良いだろう」

はいバイバイ。
2敗目のマンチカンはしょんぼり。
雪の静寂の中に、ぽつん(お題略)

でもキリンの言うことも、もっともです。

最後にマンチカン、法務部に勤めている、
執行課の実動班の特殊即応部門の副部門長、
ツバメというビジネスネームの男性に直談判です。

「ツバメさん!ツバメ副部長さん!」
仕事が終わってコーヒーなど飲む副部門長に、
非力マンチカン、言いました。
「僕も強くなりたい!
僕を、弟子にしてください!」

「漠然と、強くなりたいと言われても、ですね」
頭の回転力、カラダの筋力量、いろんな「強さ」がありますので、ツバメも少し考えます。
「そうだな。 どうでしょう、私と一緒にまず、
『どのように』強くなりたいかを探してみるのは」

「はい!探したいです!」
これでやっと、強くなれる!マンチカンは大喜び!
ツバメの手を握り、感謝でぶんぶん上下に振り、
マンチカンはさっそく、強くなるための特訓を

する前に、最後のお題回収を、させられました。

「それじゃあ、マンチカンさん。
自分自身と対話するために
ちょっと私と雪原キャンプをしましょう」

「え?」
「さいわい、自分自身の気持ちと向き合うのに、丁度良い場所を知っています。
マンチカンさん。今すぐ、カンペキな防寒対策をして、もう一度ここに、
いや、良い。私のを貸します。行きましょう」
「え……??」

善は急げ。
マンチカンはマンチカンらしく、首根っこをキュッと掴まれて、ツバメに連行されまして、
極寒の夜、無風の低温、
雪の静寂の中に放り込まれまして、
数時間、ツバメと一緒に自分を見つめ直しました。
「さむい……」

非力マンチカンはその後、低温に長時間さらされましたが、ツバメが雪の静寂はらっぱ近くに湧く天然温泉を知っておりましたので、
そこでぬくぬく、温まりましたとさ。

12/17/2025, 9:58:47 AM

「ここ」ではないどこか、別の世界。
世界線管理局という厨二ふぁんたじー組織の、
局内に整備されている広大な難民シェルターの、
中に存在する森林エリア内でのおはなし。

「君が見た夢」のお題に相応しく、月がよく見える木々の空白のあたりで、
おまたパッカン、ヘソ天で寝ているドラゴンが、
なにやら、うなされておりました。
「ぎゃお ぐぎゃお がるるるる すぴぃ」

ドラゴンは雄々しく、たくましく、美しく、
管理局に勤務するドラゴン種の中でも5本の指に入るくらいの強いチカラを持っていましたが、
ザンネン、眠気等々の本能には勝てない様子。
「ぐぎゃおおう ぎゃおおう フガッ」

ああ、ドラゴン、
君が見た夢は、どんなものだったのでしょう?

「気にしなくて大丈夫だと思いますよ」
ドラゴンの脇腹を背もたれ代わりに、パチパチ焚き火などしている人間は、
フガフガ苦しむドラゴンの顔を見て、言いました。
「どうせ先代のルリビタキ部長に、カロリーテロを食らっている夢でしょう」

十中八九、私の焚き火の音が、先代が焼く肉の音に聞こえているのでしょう。多分それだけです。
ズズッとカフェインレスコーヒーなど飲む人間は、実は管理局に勤めるドラゴンの部下でして、
数時間前まで、一緒に大仕事をしておったところ。

管理局を勝手に敵視している別の組織が
管理局に勝手に侵入してきて
管理局の資金データを勝手に荒らして
最終的に、管理局内の警察のような部署が、
すなわちヘソ天ドラゴンの部署が、
ガッチャン、捕縛したのでした。

ところでこの「別の組織」が管理局の資金データを荒らしたせいで、経理部の資金リストがシッチャカメッチャカしてしまって、
そのせいでマンチカンという経理部職員が大変な目に遭ったのですが、
それは、まぁまぁ、前回投稿分のおはなし。

「で?」
ドラゴンの脇腹に寄りかかって、焚き火などして、カフェインレスコーヒーを飲む人間が聞きました。
「その数時間前の事件が、どうしたんです?」
人間の視線の先には、
人間から温かいカップを渡されて、その中のコーヒーをちびちび飲む、マンチカンがおりました。

というのもマンチカン、
別の組織のせいで大変な目に遭いましたので
その犯人に八つ当たりを、ペチペチ、したのですが
どうにも軟弱だったせいか、
さっぱり、犯人が痛がらなかったもので。
なんなら
「非力だな?」とドストレートに言われまして。

精一杯八つ当たりしてスッキリするという、
マンチカンが見た夢は、
ガッツリ、潰されたのでした。

「なんか、なんかこう……」
経理部のマンチカン、言いました。
マンチカンの顔は、それはそれは、悔しそうでした。

12/16/2025, 9:57:35 AM

今回のお題は「明日への光」。
明日への光速計算のおはなしをご紹介します。

ここではないどこか、別の世界に、世界線管理局という厨二ふぁんたじー組織がありまして、
その日は経理部で小さいような大きいような、ともかく事件が発生中。

法務部が原因特定のために、あっちを調べたりこっちを調べたり、そっちで聞き込みしてみたり、
あっちこっちを調査している間、
ズダダダダ、ダダダズダダダ、ダダダダン!
規格外に高速、すなわち光速も良いところのスピードでもって、電卓を叩く局員が居ました。

経理部の局員です。
管理局ではビジネスネーム制を採用しており、
その局員は、マンチカンと呼ばれています。

ダガダダダダ、ドダダ、ダダダズダダズダダダン!
マンチカンは最近1〜2年程度で入局してきた新米局員。最近ようやく経理の仕事を覚えました。

ズダダダダダダ、ダダダ、ダガダダダズダダダン!
経理部のコンピュータリソースを全部ぜんぶ事件の解決に総動員しておりますので、
伝票の計算は、マンチカンが電卓で、ダダダダン!
高速、もとい光速計算するのでした
が。

「ロシアンせんぱぁぃ!!」
ダダン!全部の計算を異次元のはやさで終了したマンチカン。先輩のロシアンブルーに言いました。
「何回やっても!合計が!合いませぇん!!」

そりゃそうです、マンチカンの計算が合わないのが、まさしく「事件」のメインなのです。
前日間違いなく収支を確認した資金が、その日の昼から妙な方向にズレてズレて、
すなわち、管理局の中から資金をイジられていることが、その日のうちに発覚したのです。

要するにデータ上の資金強盗です。
どうやら、管理局を推しの仇のごとく敵視している組織が、嫌がらせをしているようなのです。

「あのねマンチカン」
完全に混乱状態のマンチカンに、
先輩のロシアンブルー、言いました。
「どこがどれくらい合わないか、探してるのよ」

ズレを探して、差額を見つけて、記録する。
それがマンチカンの、今日のお仕事です。
だけどマンチカン、敵襲とかハッキングとか、ともかく外部からの攻撃に慣れてないのです。
去年いきなり攻撃的な組織がケンカを売ってきたときも、マンチカンはビビってしまって、
カチンコチン、怖くて固まっておったのです。

「大丈夫、マンチカン?明日までに特定できる?」
「うぇぇぅ、がんばぃます」
「ほら深呼吸して。涙拭いて。明日までよ」
「がんばッ、がんばぃまぅ、ぅえぇぅ」

「本当に大丈夫?」
「うぅぅ」
「ちょっと休憩する?」
「ぅえぇぅぅ……」

ダダダダダ、ズダダダダダダン!
そろそろお題回収です。
期限であるところの明日に向けて、マンチカン、電卓を叩いて叩いてダダダダン!
明日への光速計算を、続けるのでした。

「マンチカン。マンチカン」
「なんですか先輩」
「休憩しましょ。ね。イーツ取ってあげるから」
「うぅぅ。 ゴチになります。 おにく。さかな」

「資料が汚れちゃうから飲み物オンリーよ」
「おにくぅぅぅーー」

ダダダダ、ズダダダン!
明日への光速計算は、当分、続きましたとさ。

12/15/2025, 9:35:53 AM

「丸くなるな」で始まる広告がありますが、
意外とその缶を飲んだことがない物書きです。
「星になる」がお題とのことなので、星のおはなしをひとつ、ご紹介。

前回投稿分から続くかもしれないおはなし。
最近最近のおはなしです。
都内某所、某稲荷神社敷地内の一軒家に、
人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしておりまして、
そのうち末っ子の子狐が、
親友の化け子狸が修行している和菓子屋さんから、何種類かの和風シュトレンを購入。
尻尾ブンブンで、帰ってきました。

抹茶シュトレン、小倉あんシュトレン、
和紅茶シュトレンにサツマイモシュトレン。
ゆずとミカンとチョコのシュトレンもあります。

「しゅとれん!しゅとれん!」
シュトレンと初遭遇の子狐は大興奮!
みたらしシュトレンをひとくちガブッ!切り分けるでもなく食べますと、
「おいしい」
バターと砂糖と、みたらしソースとあんこの味が、子狐の舌の上で幸福の宇宙を爆誕させまして、
「おいしい!」

子狐の目がお題どおり、まさしく、
星になる、のでありました。

「しゅとれん、おいしい、おいしい」
星になるキラキラ両目を輝かせて、コンコン子狐はみたらしシュトレンを、
ちゃむちゃむちゃむ、ちゃむちゃむちゃむ。
一気に食べ進めて、半分を通り越して、いつの間にか1本、全部食べてしまいました。

「しゅとれん、おいしい、おいしい!」
星になるキラキラ両目の子狐の隣では、なにか良くないものでも食べてしまったのか、
子狐の神社に来ておったドラゴンが、弱々しくうつ伏せで、口を開けて、ダウンしています。

多分ワサビでも食ったのです。
子狐はなんでも、多分、知っておるのです(多分)

「オッサン、オッサン、だいじょうぶ」
くんくんくん。子狐はドラゴンのパッカンしている口のニオイをかぎました——やはりワサビです。
『みれば わかるだろう』
きゅあおう。くぅおおうん。ドラゴンは虚ろな目で、もはや魂が星になる直前です。
よほど大量のワサビを、一気に食ったのでしょう。

「オッサン、オッサン、ワサビ、好きなの」
『ちがう』
「オッサン、ワサビ、きらいなのに食べたの」
『事故だ』

「オッサンくちなおし、しゅとれんどーぞ」
「ぎゃおお!!ぐぎゃおおおん!!」

あまい!違う、苦い!じゃない甘い苦い甘い!!
ぎゃおぎゃおぎゃお!!
子狐がドラゴンのパッカンしている口に、抹茶シュトレンをブチ込んだところ、
どったんばったん、ドラゴンは一気に元気になって、活発に、ドチャクソに、動き回りました。

抹茶の苦味とワサビの辛味と砂糖の暴力で、のたうち回っているとも言います。
まぁ、お題とは無関係なので、気にしないのです。

そんなことよりコンコン子狐、美味探求の同志たる人間の匂いを察知しまして、
さっそく、シュトレンの数種セットをその人間と一緒に、食べることにするのです。

「おねーちゃん!おけしょーの、おねーちゃん!」
それは、子狐を誰より上手にトリミングして、お化粧してくれる、女性の人間でした。
「しゅとれん!いっしょにしゅとれん!」
女性の人間は、ドワーフホトといいました。

「よしよしコンちゃん、あたしが、シュトレンにお星さまの魔法をかけてあげましょー」
子狐がドワーフホトのもとへ跳んでくと、
ドワーフホトはニッコリ笑って、ぱらぱらぱら。
和風シュトレンの白い粉砂糖の上に、赤や緑や黄色なんかの、小ちゃくキレイな金平糖を、
お星さまのように、少しずつ降らせました。

「おほしさま」
「手作りだよぉ〜」
「てづくり!」

さぁさぁ、お星さまのシュトレンを食べましょう。
子狐とドワーフホトは幸福に、和風シュトレンを分けあって、一緒にもぐもぐ!
やっぱり子狐もドワーフホトも、両目がキラキラ、星になる、のでありました。

12/14/2025, 9:38:23 AM

去年の夏、8月のだいたい最初の頃、「鐘の音」というお題を書いた物書きです。
日本式風鐘とはすなわち風鈴のこと。
稲荷神社の子狐が、手水の上に飾られたキラキラガラスの吊り鐘を取ろうとして、ぴょん!
最終的に手水にボチャン、したのでした。

さすがに冬の入口を過ぎた12月に
そんな見の冷える、下手すりゃ凍るような物語を
再掲載するワケにもいかないワケでして。
今回は冬らしいおはなしをひとつご紹介。

最近最近のおはなしです。
都内某所の某稲荷神社、敷地内の一軒家に、
人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が家族で仲良く暮らしておりまして、
そのうち末っ子の子狐が、去年の夏に神社の手水へ、勢いよくボチャンした遊び盛り。

その日はコンコン子狐の、お気に入りの参拝者が、
子狐のお母さんに頼まれて、子狐に紅白ツートンのハーネスつけて、紅白ツートンのリードでもって、
だいたい10分から20分程度、お外へ散歩に連れていってくれました。

というのも子狐の大親友の化け子狸のおうちが
まさかの代々続く和菓子屋さんでして
その和菓子屋さんが今年初めて
和風シュトレンを限定販売するのです。

『行って、好きな味を買ってらっしゃい』
子狐のお母さんはそう言って、残高が十分チャージされたICカードを託してくれました。

「ICカード? 子狐、使い方は分かるのか」
「あいしーかーど」
「そうだ。分かるのか」

「キツネなんでもしってる」
「本当か」
「キツネうそつかない」
「本当は?」
「うそつかない!キツネ、わかる!」

「和菓子屋でシュトレンを選んだとして、レジに着いたとして、最初にやることは?」
「『ツケといてください』。」

「……そうか」

ガランガラン、がらんがらん。
さぁさぁ、お題回収です。

遠い鐘の音が、ガランガラン。
子狐の大親友、化け子狸の和菓子屋さんの方から、
少し控えめに、でも確かに、聞こえてきました。
和風シュトレンが焼き上がったのです。

「はやく!はやく!しゅとれん!」
ギャギャギャ!きゃんきゃん!
コンコン子狐はリードを引っ張って、なかば跳んでるような、二足歩行モドキになりながら、
一緒に散歩してくれる参拝者さんを引っ張って、
遠い鐘の音めがけて、猛ダッシュします。

数人程度並ぶ和菓子屋さんの、列の先では和菓子屋の若い店員さんが、がらんがらん。
シュトレンの店頭販売開始を告げます。
お客様の目の前で、お客様の望みの量の、美しいパウダーシュガーをパタタタタ。振るのです。

「はい、まいど、まいど!お待たせしました」

子狐の親友の子狸も、しっかり人間に化けて、白い三角頭巾をして、お店のお手伝い。
砂糖振ってラッピングしたシュトレンを受け取って、それを和紙風の柄の箱に詰めます。
詰められたシュトレンは、たしかに粗熱はある程度、抜けているものの少し温かくて、
なにより、バターと砂糖の良い香りがします。

「しゅとれん、しゅとれん、しゅとれん」
くぅくくく、くぅくぅ、くわぅ!
リードで引っ張られて、二足歩行の子狐です。
ぴょんぴょん跳ねて、尻尾も振ります。
人間が子狐を散歩させているというより、
子狐が人間を散歩させているような強引さで、
子狐は参拝者さんのリードを引っ張ります。

「はい、次のお客様!お待たせしました」

遠い鐘の音に導かれて、和風シュトレンの販売場所に到着した子狐の尻尾は、完全に高速回転。
お母さん狐から貰ったICカードで、全種類の和風シュトレンを1個ずつ購入して、
こやこや、こやん!嬉しそうに帰りましたとさ。

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