『枯葉』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
枯れた木の枝に残った枯葉が風になびいていた。
たった一枚。どんなに強い風が吹こうとも飛ばされることはない。枝にしがみつき、離れることを拒んでいるようだった。
その木の下で、一人の少女が佇んでいた。見覚えのある制服は自分の母校のものだ。こちらに背を向けているため、少女の顔は見えない。けれどもその後ろ姿を、自分はよく知っているような気がした。
「何を見ているの?」
問いかける言葉に、細い指が枯葉を指し示す。
風に揺らされながらも飛ばない枯葉。学生時代に流行ったお呪いを思い出し、理解した。
彼女は枯葉が落ちるのを待っているのだろう。
――一本の木を決めて、その木の最後の葉っぱが地面に落ちる前に取ることができたなら、願い事が叶う。
友人たちは恋の願い事を託していた。自分も木に願い事を託して、葉が落ちる瞬間を待ち望んでいた。
友人たちの顔が思い浮かぶ。葉が落ちる瞬間に立ち会えず、あるいは風に葉が遠くへと飛ばされ願いが叶わなかった悲しい顔。運よく葉を手に取ることができ、それをお守りに好きな人へ告白に向かう真剣な顔。そして恋が叶い幸せそうに微笑む顔。
少女はどんな願いを叶えるために葉が落ちるのを待っているのだろうか。
恋の願いか、学業の願いか。それとも全く別の願いなのか。
少女から目を逸らし、無言で両手を見つめる。
あの日、手に入れたはずの枯葉は、どこに行ったのだろう。捨てたのか、押入れの奥底にでもしまい込んだのか。
もう、覚えてはいない。
「――っ」
不意に、一際強く風が吹き抜けた。枝にしがみつく枯葉はとうとう耐え切れずに、風に乗って空へと放り出されてしまった。
このままでは枯葉は遠くへと飛ばされていってしまうことだろう。願いが叶わないのだろう少女の背を見ながら、そっと息を吐いた。
だが予想とは違い、風はすぐに止まる。高く舞い上がった枯葉はゆらゆらと揺れ動きながら少女の手元へと落ちていく。
かさり。微かな音を立てて、少女の願いを叶えるとでもいうかのように、枯葉が手のひらへと落ちた。
「――叶った」
声がした。枯葉を手に少女がゆっくりとこちらを振り向く。
「お姉ちゃんはかえってきた」
彼女の願いは、いつか自分が願ったもの。
振り返りこちらを見つめる無感情なその顔は、その姿は。
自分のものだった。
「――っ!」
聲にならない悲鳴を上げ、飛び起きた。
心臓が痛いほど激しく動いている。汗を拭いながら、深く息を吐いた。
嫌な夢を見た。
学生時代に流行ったお呪い。願ったこと、その結果を思い出してしまった。
「お姉ちゃん」
ある日突然いなくなってしまった姉。大人たちがどれだけ探しても、彼女は見つからなかった。
唯一見つかったのは、姉が来ていた上着だけ。近くの淵に浮かんでいたらしい。
そこは大人も滅多に立ち入らない場所だった。恐ろしい化け物がいると言われ、姉は連れて行かれてしまったのだと、それきり姉を探すことはなくなってしまった。
あの時子供だった自分はそれを認められず、お呪いをした。けれど枯葉は風に乗って遠くに飛ばされ、その時は叶わなかったのだ。
もう一度お呪いをしたのは、数年前のこと。偶然目についた木に一枚だけ枯葉が残っているのを見て、願をかけた。
姉が見つかりますように。帰ってきてくれますようにと。
枯葉は目の前に落ちてきた。それを手に家に帰り、数日後、実家から連絡が来た。
願いは叶い、姉は見つかった。いなくなった姿のまま、家に帰ってきた。
「――起きないと」
頭を振り、意識を切り替える。
朝の準備をしなければ。朝食を作り、夫と娘を起こさなければいけない。
のろのろとベッドから抜け出し、部屋を出る。二人を送り出した後の予定を思い浮かべながら、眉を寄せ息を吐いた。
夢を見たからか気が重い。実家の両親の小さな背が浮かんで、目を伏せる。
今日は姉の、十三回忌の法要だった。
重苦しい気持ちを吐き出すように息を吐く。
娘の迎えを理由に法要が終わるとほぼ同時に家を出てきてしまったことに少しだけ罪悪感が芽生えるものの、どうしても長居はできなかった。
時が止まったままの姉の写真を見ていることが苦しい。姉を置いて年を取っていく自分を思い知り、うまく息が吸えなくなってくる。
きっと家族の中で、自分だけが正しく姉のことを受け入れられていない。日常のどこかに姉を探すことを止められなかった。
「お母さん」
不意に、今まで黙って車に乗っていた娘が声を上げた。
「公園に行きたい。だめ?」
普段は自分の意見を言わない娘の願い事に、内心で驚く。
時計を見れば、まだ五時にもなっていない。夕食の準備にはまだ早い時間だった。
「少しだけね。近くの公園でいいの?」
「うん。そこでいい」
頷く娘に微笑んで、行き先を変更する。
向かう先の公園は、あまり大きくないからか遊んでいる子供の姿は少ない。娘はそこで誰かと遊ぶのではなく、ベンチに座ってぼんやりとしていることが好きだった。
まるで姉のようだ。娘には申し訳ないと思いながらも、時々姉と重ねてしまうことがある。
例えば好きな食べ物であるとか、ふとした瞬間の何気ない仕草であるとか。姉の姿を探しては、それに苦しくなるというのに止められなかった。
公園に着き、しかし娘はいつものベンチに座るのではなく、奥の方へと向かっていった。
そこに立つ一本の木の前で止まる。見上げれば一枚だけ枯葉が残っているのが見えた。
途端に今朝見た夢を思い出し、息を呑む。木を見上げる娘の姿が自分の姿に重なって、震える体を誤魔化すように強く手を握りしめた。
「ねぇ――」
耐えきれず止めようと声を上げかけた瞬間、強い風が吹き抜ける。
風は枝に残る枯葉を揺らし、空高く舞い上げた。
夢の中の、記憶の中の光景が重なる。枯葉は高く上がるだけで遠くに流されていく様子はなく、風が収まった後ゆらゆらと揺れながら降りてくる。
娘は手を差し出し、その枯葉を受け止めた。しばらく枯葉を見つめ、ゆっくりとこちらを振り向く。
「お母さん」
近づいて、そっと手を取る。動けない自分の手に枯葉を乗せ、娘はふわりと微笑んだ。
「お母さんが笑ってくれますように」
息を呑む。
「お姉ちゃん」
「わたしはずっと側にいるから、寂しくないよ」
思わず握ってしまった手の中で、くしゃりと枯葉が音を立てる。手を開けば砕けた枯葉が、風に乗って遠くへと流されていく。
それを見ながら、二度目のお呪いのことを思い出した。
妊娠に気づいたのは、お呪いをした次の日のことだった。宿った命に、冗談交じりで姉が帰ってきたのかもと笑ったことを覚えている。
ただの偶然。そう思いながらも、いつの間にか感じていた重苦しさはなくなっていた。
「帰ろうか、お母さん」
「――うん。帰ろう」
泣きそうになるのを堪えて笑う。手を繋いで、ゆっくりと歩き出す。
伝わる温もりが、ただ愛おしい。
手に残る枯葉の欠片に、どうかこの幸せが続くようにと密かに願い、風に乗せて空へと飛ばした。
20260219 『枯葉』
膝を抱えて蹲る彼と背中を合わせて座る。
伝わるのは、深い悲しみと痛み。あの時こうしていればと、繰り返す後悔にそっと俯いた。
「可哀そうだと思われたくない」
「可哀そうだなんて思ってないよ」
「同情なんかいらない」
「同情じゃないよ。こうしていたいだけ」
ぽつり、ぽつりと呟かれる言葉に、静かに答えを返す。
彼は顔を上げない。心はずっと悲しみの海に沈み込んで、まだ浮かび上がってこられない。
「――寂しいよ」
微かに溢れ落ちた言葉。彼の本心に、胸が苦しくなる。
「そうだね……」
側にいるよ、とは言えなかった。言ったとして、自分では代わりにすらならないのだから意味がない。
自分にできるのは、こうして心に触れることだけ。彼から離れてしまった唯一のように、手を引いて外へと駆け出していくことはできない。
遠い昔に手を振り払われてから、彼を見れなくなってしまった。
きゅっと唇を噛み締め、ただ彼の温もりに寄り添う。伝わる痛みがすべて自分に移ってしまえばいいのにと密かに願いながら、彼が再び顔を上げるのを待っている。
「ねぇ……」
か細い声が呼ぶ。身じろぐ気配に、静かに体を離した。
彼はまだ悲しみに沈んだまま。けれどこれ以上ここにいるつもりはないのだろう。
行かないで、と溢れ出しそうになる思いを必死に飲み込む。無理矢理に唇の端を持ち上げ、口を開く。
「行ってらっしゃい」
彼との別れの合図。声が震えないように、大げさに明るく振舞った。
けれど、いつまで経っても彼が動く音がしない。いつもならばすぐにでもここを離れていくというのに、違う行動を取る彼に不安を覚えた。
彼は今、何を思っているのだろうか。知りたくても、彼に触れていない今は何一つ伝わってこない。
自分から離れた方がいいだろうか。そう思った瞬間、手を掴まれた。
「ねぇ」
ぐい、と引かれ、体が傾ぐ。そのまま彼へと倒れ込み、途端に伝わる思いに息を呑んだ。
深い悲しみ。そして怒り。彼自身に向く強い感情に、訳が分からず動けない。
手が離されて、代わりに頬に温もりが触れる。久しぶりに感じる彼の手の感触に、けれど嬉しさよりも困惑してしまう。
今日の彼はやはり変だ。それ程悲しみが深いのだろうか。
「なんで何も言わないの。恨んで拒絶すればいいのに、どうしていつも受け入れるの」
感情を抑えた静かな声に、その言葉に笑みを形作っていた口元が歪んだ。
何か言わなければと思うのに、何一つ言葉が出てこない。
声が近い。今彼と向き合っているのだと理解して、益々何も言えなくなってしまう。
「優しくしないで」
彼は言う。
優しくなんてしていないと言葉を返そうとして、唇に触れた彼の指に止められた。
「優しくされると勘違いしそうになる。あの日俺が手を離して置いて行ったのが悪いのに、こうして目を合わせても俺を見てくれないことを責め立てたくなる。今すぐ逃げ出して、何もかもを忘れたくなる」
段々と声が掠れていく。泣くのを耐えるかのように唇を噛み締める音がして、だから、と震えた声が告げる。
「寄り添おうとしないで。同情なんてほしくない。ただ本心を聞かせて」
彼の真っすぐな視線を感じる。切実な声の響きに、手が服の裾を握り締める。
本当に言ってもいいのだろうか。彼を困らせるだけではないのかと、不安が口を重くする。
彼は何も言わない。ただ自分の言葉を待っている。その気配に訳もなく泣きたくなりながら、ゆっくりと口を開いた。
「――行かないで」
ひゅっと、息を呑む音がした。
「話を聞くことしかできないけど、悲しい気持ちに触れることしかできないけど、寄り添っていたい……側にいてほしい」
彼が激しく動揺しているのが伝わる。やはり困らせてしまったのだろう。
泣くのを誤魔化すように笑ってみせる。ごめんと口に出そうとして、しかしそれを遮るように強く抱きしめられた。
「いかないよ。ここにいる……離れたくない。手を離して、今度こそいなくなってしまうんじゃないかと思うと、とても怖い」
ごめんと彼は繰り返し謝る。
痛いほど強くしがみつく彼の腕が震えていることに気づいて、何も言葉が出てこない。
そっと腕を伸ばす。言葉の代わりに彼の背に腕を回し、答えるように抱き着いた。
彼の悲しみが流れてくる。悲しみが幼い頃の自分たちの姿を浮かばせる。
遊び疲れて動けなくなった自分の手を離して、彼は家へと走っていく。乱暴に開けられた扉。出迎えた母の手を掴み引いて、必死に駆け出した。
離れていた時間は決して長くはない。けれど彼が戻った時には遅かった。呆然と立ち尽くす小さな背。彼の視線の先に黒く蠢く影が見えた瞬間、全てが歪んで真っ黒に塗りつぶされていく。
黒が別の形を作る。明かりのない部屋で眠り続ける自分。意識だけが部屋の隅で、彼と抱き合っていた。
「どこにいても、誰といても、頭から離れない。空っぽの目。機械だらけの暗い部屋……あの日から全部変わったのに、変わらないお前が悲しかった」
「ごめんね」
「そうやってすぐ謝ることが嫌だ。あれから我儘を言わなくなったことも、無理矢理笑う所も……こうして触れていると伝わる感情に、温かなものしかないのも全部嫌だ」
流れてくる悲しみの中に温かなものが混じってくる。包まれる温もりと同じ温度。
「俺の気持ち、ちゃんと伝わってる?」
「うん」
「悲しみに寄り添わないで。同じ気持ちでいるってこと、しっかりと感じていて」
伝わる優しさに、同じ気持ちを返そうと強くしがみつく。
悲しみはまだ感じる。後悔は消えてなくなることはない。それでも彼が望むから、ただ愛しい気持ちを感じ、返していく。
「大好き」
「俺も、大好きだよ」
ふふ、とお互いに笑い合う。温もりの心地よさに、意識が微睡み始める。
意識が途切れ、彼と抱き合う自分が霞んでいく中。
あの日の、澄み切った青空が見えた気がした。
20260220 『同情』
いつの間にか
冬が
終わろうとしている。
出産前も
不調で
あまり出かけられず
動き回れたのは
まだ
紅葉狩りの季節。
出産を終え
少しずつだけど
動けるようになってきて
すっかり
季節は変わっていて。
大変な時も
穏やかな時も
時間は等しく
過ぎていく。
この子との
おでかけは
春になるかな。
#枯葉
リビングの一角を手形アート会場に変えてみた。
ダンナが娘を外へ連れ出してくれた時間を利用して、
折りたたみの机に白い大きな模造紙を敷き、
色とりどりのスタンプ台と、用意できるだけの画用紙を広げる。
「公園に行ってきたぁ」と元気よく娘が帰ってくるや否や、
一目散に机に向かって駆け出し、スタンプ台を取ろうとする。
なんとか制止に成功して、うがい手洗いをさせてから解放すると、そこからはもう大騒ぎだった。
スタンプ台で色を付けたその手をペタペタと押しまくり、
押した手形に顔を書き込んでいたかと思えば、
今度は黄色とオレンジの色を混ぜ始める。
どうやら、さっきの公園で見つけた枯葉をヒントにしているらしい。
押すたびに少しずつ、黄色やオレンジの出方が変わり、
納得いくまで、小さな手形を押しまくっていた。
だから今、リビングのあちこちに手形の葉っぱが愛おしく散らばっている。
「やっと寝てくれたよ」
その夜、興奮が冷めない娘をなんとか寝かしつけ、リビングに戻ってくると、
さっきまで手形アート会場だった机に向かうダンナの姿があった。
「相当気に入ったんだね、大成功じゃん」
振り向いたその手には、娘の手形アートがあった。
机の上には、絵の具やパレットが並んでいて、
娘の手形で描かれた綺麗な枯葉を囲むように、
淡くて優しい色合いの花がたくさん描き込まれていた。
「すごい、素敵だね」
「絵の具で絵を描くなんて、卒業して以来だよ」
どうやら、夢中になっている娘を見て、
制作意欲が刺激されたみたいだった。
「せっかくだから、何か書いてよ」
ダンナのようには上手く絵は描けないけど、
この絵に合うクレヨンを一色選び、
娘の名前と日付を丁寧に書き入れる。
この絵のタイトルは「枯葉が春を連れてくる」って感じかな。
ふたりでそんな話をしながら、朝が来るのがとても待ち遠しかった。
【枯葉】
百円ショップで買った観葉植物を、小さな鉢に植えてから20年くらい経った。そんなにも長く生きのびるとは思わなかった。何度かの引越しで環境が変わっても、ずっと窓際にいる。
本当は大きな鉢に植え替えればいいのだけれど、面倒でそのままにしていた。土がカラカラになったら水をやる。あまり上に伸びようとせずに、少しずつ成長した。下の方には、もうないが、上の方に葉をつけている。
ほとんど姿を変えずにいるのだが、時々黄色くなった枯葉を一つぽとりと落とす。茎の間からは、緑色のみずみずしい新芽が出ている。
黄色い枯葉をそっと手に取る。過酷な環境?でもしっかり生きていることに、改めて感動する。
「枯葉」
枯葉
「わっ」
強い風に吹かれ、空を舞う枯葉。
地面に落ち、カサカサと音を立てながら、転がっていく。
「風と遊んでるみたい」
枯葉が風と遊ぶ様子を微笑ましく思いながら、季節の移り変わりを感じるのだった。
枯葉
「どんな葉でも最後は枯れてしまうのに。」
それはどんなに綺麗だろうと人々に記憶されようと変わる事は無い。美しかった頃を今の朽ちた自身が人々に踏まれても葉が大地の養分となるその日まで想い続けて居るのであろう。
「でもそれは葉だけでは無く全ての生命に言える事だ。」
もちろん、人間も。生きると言うのはそう言う事なのだ。始まりがあるのだ。終わりが無いというのは可笑しい事だと思う。それでも、
「終わりがあるから美しいんだ。いつまでも続く物じゃないからそこにも尊さを感じているんだよ。」
死ぬのが怖くないかと言われるとそう言う訳では無いがみんないつかは死ぬのだから早いか遅いかの違いだろう。
「結局は何時も生きている者の方が死について怖がり、死んでからの方が死を体験したからこそ生きている者よりかは怖がらないのかも知れないね。
「枯葉」
消費期限とか有効期限とか...期限って言葉を考えた人、良心のかけらもないよね。突然友人の結衣(ゆい)が独りごちる。
「いや、消費期限はいるでしょ。お腹壊すし」
「まぁ確かに。でもさ、何らかこの先も追われるって生きづらくない?提出期限とか......生死とか。」
「確かに。割と残酷かもね。」
世の中はどんなことにも期限を付ける。人間の生活のために必須なこととぼんやり頭では分かってはいるけれど、のんびりと生きていきたい私達にとっては地獄かも。なんて思いながらデザートの苺を食べる。
「ねぇ、進路は決めた?私はやりたいことも無いからとりあえず大学に行くつもり。咲は?」
もうそんな時期だよね、なんて制服のスカートに折りたたんで入れた進路調査を思い出す。結衣はもう自分の進路を決めたんだ。なんだか置いていかれたような、クラスが団結して文化祭の出し物を考えてる時のなんとも言えない疎外感を覚える。
「私は......私も大学に進むつもりだよ。やりたいことなんてひとつも無いし」
そう言った私の言葉にふーん、と納得していなさそうな声色で返事をする結衣に苦笑する。これ以上何も聞いてこないのは、親友だからなのかな。
ーーーーー
後日追筆したいと思います。
硝子片を割り歩く
カシャンカシャンと音のなる
散り散りしている枝の先
粉々している焚き火の葉
ひび割れ 張り裂け
和楽を集め
からから風に吹かしてる
【枯葉】
"枯葉"
どの顔もお面にするには小さくて
はみ出た頬がやけに焦がれる
Mrs,GREEN APPLE 光のうた 作詞 作曲 大森元貴
出来れば あそこが沈む時に
1隻の船が差し出そう
「ワタクシ」のこの身が滅びようとも
あなたが助かればいいの
あそこに続く光
君を抱えて唱えるんだ
隠れないでいいよ
悩まなくていいよ
もう泣かなくていいよ
笑っていればいいの
優しさを感じてもらうために
無理に繕う 僕だけど
冒頭の4行にもあるように
そんな人間になりたいの
未来に向かう途中
心に留めて 謳う
わがままでいいと
背負い込まなくていいと
泣きたくなってもいいの
全て君次第でいいの
辛くなってもいいの
そのまま歩けばいいの
そのまま歩けばいいの
『枯葉』
いつもありがとうございます。
スペースのみです💦
僕は、何か重要なことを忘れている気がして、けれど何も思い出せなくて、ただぼんやりと、家の縁側から庭を眺めていた。
庭はすっかり冬景色で、雪こそ無いが、枯れて地面に降り積もった木の葉が地面を覆っていた。気紛れに足を伸ばして踏んでみれば、がさりと乾ききった葉が砕ける音を立てて、心に微妙な爽快感が残る。楽しくて、ついざくざくと年甲斐もなく庭を歩き回ってしまった。
ひとしきりはしゃいでから、また縁側に座って一息つく。まだ会社から帰ってきてそのままの、スーツのスラックスの裾。そこに、細かく砕けた枯葉の屑がびっしりと付いてしまっていた。枯れた葉の、赤茶色に染まった裾を見て、忘れていた何かの断片に触れたような、そんな気がした。僕は、この光景を知っているような、そんな予感だ。けれど、詳しいことは依然として思い出せないままだ。
ひらり、ひらりと、その葉を落とし損ねた木々が、時折思い出したように葉を振るい落とす。はらはらと落ちていく葉が、僕の忘れている、何かに似ているような気が、また脳裏をよぎった。
鮮やかな赤や黄色だった葉は、やがて色褪せて、全てがくすんだような茶色へと変わっていた。瑞々しかったその身から水分を失い、カラカラに乾いて砕けてしまう葉が、なんだか愛おしかった。
いつまでも思い出せない記憶が段々気になってきて、少しだけ、思い出そうと意識を向けた。あの、砕けてスーツの裾に纏わりつく葉に似たような、乾いて色を失うもの。それが、落ち葉の海のように満ちていた場所。それを、僕は確かに知っている。
ずき、と頭が痛んだ。不意に、鮮烈な赤が網膜を焼く。干からびる前の木の葉のような、命の赤色。それが、木の葉のように、僕の視界の片隅で、はらりはらりと散っていく。
もう一度、スーツの裾に目を落とした。スラックスの足の先は、こびり付いた液体で引き攣れて固まって、赤茶色の染みがべっとりと残っていた。
ああ、そうだ。殺したんだ。ふと、思い出した。全てが嫌になって、会社の上司を殺害した。確かに、この手で。
庭に積もった枯葉を見ながら、僕はまたぼんやりと、落ち葉のように振りしきるあの生命の赤色を、焼きついた網膜から脳へ、今度こそ忘れないように温めていた。
テーマ:枯葉
枯葉
骨が浮き出るような細くてガサガサな手
健康とも言えない肌の青さ、優しそうな、悲しそうな顔
小柄そうだけど、抱きついてみれば意外とそうでもなく
そんな、枯葉みたいな貴方が好きでした
枯葉の散歩道
サクサク
サクサク
歩く音
雨の降った次の日は
つるっとすべって
転びそう
慎重に慎重に
枯葉の道を歩いてく
赤や黄色や茶色いものや
キレイなままの葉
破れてしまった葉
小さいものや
大きいものも
色んな葉っぱが
グラデーション
枯葉の散歩道
サクサク
サクサク
歩いてく
サクラ
サク
春の訪れを待ちながら・・
枯葉
心の奥まで枯らされて生きる気力も、、ない。
枯葉
さみしいね…
ひとりさみしく
枯葉のように…
散っていく
落ちていく葉を見つめながら、なんとなく、自分達の終わりを感じている。
外は寒い、コタツから出るにはまだ温もりが足りない。そのあたたかさに、生ぬるさに、居心地の良さに、私はひどく依存している。
付き合って一年半、同棲して半年、婚約して三ヶ月。
何も変わらない日常の中の、何も変わらないいつもの違和感。満たされない心、日々募っていく不安。彼は私を愛しているのだろうか。
「ただいま」
彼は優しい。私が好きだと言ったヨーグルトも、いつも飲んでいるトマトジュースも、冷蔵庫から切らした事はない。堅実で真面目で控えめで、計算高く、ずるい人。この広いようで狭い1LDKの中に、私の逃げ場はないらしかった。
「入ってきたら最後、出口はないからね。俺のドアにはかえしがついていて、出られないんだ。」
彼は私を優しく抱きしめながら、縛っていく。ぎゅうぎゅう、と。緩く、きつく、緩く、きつく。何度もした別れ話。彼のいつもの魔法の言葉に、私はいとも簡単に誘導される。出口のない彼という部屋へ、私は迷い込んでしまった。
私は彼の匂いが好きだった。シャンプーでも柔軟剤の香りでもない。彼からする、彼という人間の匂いが好きだった。首筋に顔を埋めて匂いを嗅ぐ私のいつもの癖に、彼はきずいていつも笑っていた。そんな時間がただゆったりと、永遠に流れていく。
「いいよって、いってくれる?」
お酒の力を借りてした別れ話は、怖いほどすんなりと進んでいく。辛口の日本酒を飲んだあとでないと、私にはあの部屋の出口を見つけることはできなかったのだった。
「幸せになったその先で会えるかもしれない。と、その未来に向かって、一生懸命生きてみるよ」
彼の優しさは残酷さを秘めていて、また、私も大変に残酷な女なのだと分かった。抱きしめるのは、愛しているから。涙を流すのは、離れたくないから。呼吸ができないのは、失うことを拒否しているから。彼の温もりを必死に記憶しようと、何度も何度も触れるのに、その手は何も掴めなかった。二人、泣き腫らした目で何度も何度も抱きしめ合い朝が終わる。
春になって桜が咲いたら、また会おうね。どことなくそんな声が聞こえたけれど、「呪いになってしまうから」と、約束はしないでおこう。縛りたくはないんだ彼は言った。互いに離れて幸せになったその先で、また隣で歩くことを選ぶ人生はあるのだろうか。それとも違う誰かの隣で、笑顔を咲かせるふたりがいるのだろうか。空っぽになった自身の心はまだ何も発してはくれず、ただただベッドに沈むことしか出来ないまま1日は終わっていった。枯れていく葉が綺麗な桜へと変化していくまでに、私たちはあの部屋に、また戻っているのだろうか。
秋の深まった、ささやかな暖かさのある昼間だった。風は冷たいけれど優しい。
岩間に作られた広場は山奥とは思えないほどなだらかだった。きっとここの主が開墾した跡だからだろう。
遠くで小川の流れる音がする。平屋の小屋は五つ。そのうちの大きな家から子供達が何人か飛び出してきた。耳の長いもの、毛皮や鱗ににおおわれたもの、四足歩行のものもいる。
甲高い楽しそうな声を聞きながら、カノンはぴたりと立ち止まった。
平和な光景だと誰もが口を揃えて言うだろう。
多くが迫害されて逃げ延びた子供や大人、老人達が住まう終の村だった。最初は荷運びの依頼でここまで来たけど、数日過ごしてすっかり愛着が沸いてしまった。はぐれ魔物達が人間と協力して畑を耕し水を運び、手負いの獣戦士達は警備の後継者を育てる様子を今朝見てきたばかりだ。
ここは村としてしっかりと運営されている。少し産業としては弱いけれど、放牧と畑と林業。立派じゃないか。
「どうした、お使いの途中だろ」
「おっちゃん」
2メートルのがっしりしたオーガに話しかけられた。人語が話せるのだ。そしてここの管理者。彼の善意で自分達は置いて貰っている。
「すぐ向かうよ」
「なんだ、寂しそうな顔して」
カノンは言葉につまった。なんでこんな感傷的な気分になったか自分では全然分からなかったからだ。
「そう、かも。ぼくの育った村に似ているんだ」
「ずっと向こうの森を越えたところだったか」
「ここのほうがずっと広いし整備されてる」
光栄だ、とおじさんはにやっと笑った。
「子供なのに、えらい遠くから来たな。良く頑張ったな」
「みんなと一緒だったから」
幼馴染み二人と、妖精と、道連れ二人。賑やかな旅だった。
「それでもえれぇな。そんなに気に入ったなら、うちの子になっちまえ」
大きな手ががしがしとカノンの頭を撫でる。
逃げたい。遠くに。ここに住みたい。みんなと一緒に。でもそれは叶わないんだ。色んな感情が渦巻いて、ちょっと鼻がつんとする。
おじさんは差別をしない。色んな種族な子供達を分け隔てなく愛情深く育てている。夢の未来をみているようで…切なかった。
色が少しずつ変わっていって
水分が少しずつ抜けていって
カサカサと音がするようになって
いつかどこかへ消えていく
消えた後も変わり続けて
いつかどこかに宿るだろう
そんな風に躍動するものを
ただの枯葉と呼んでいいんだろうか
#枯葉
『枯葉』
春に芽吹き
夏に生い茂り
秋に染まる
冬にはただ散って
“枯葉”になる
何気ない季節のうつろいが
僕にはなんだか寂しくて
拾った枯葉を
意味もなく
ポケットにしまい込んだ