『誰よりも』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
『誰よりも』
誰よりもって言うと、絶対違うけど、
私はたぶん生きるのが下手。
たぶんじゃないね、確信を持って言える。
友達の定義が分からなくて、
友達って言っていいのか未だに悩んでるのも、
モヤモヤ考えて無駄な時間を過ごしてしまうことも。
自分のことは大切に思えないから、
誰かを大切に思うこともあんまり出来ないし、
感情とかもよく分かんない。
上手な生き方はしてないなって思う。
これはもうどうしようもないし、
改善させたいとは思うけど、
良くはならないだろうなって思ったりする。
そう、だからきっと、私は生きるのが下手。
〈誰よりも〉
「寂しい」
ふと、そんな言葉が口から溢れた。
久しぶりの休み。
一日中部屋から出ることもなく、だらだらと過ごす今日この頃。
スマホを見るのにも疲れて、ベッドの上で天井の照明をじっと見つめながら、ただ零れ落ちただけの言葉。
きっと、特別な意味なんてないはずなのに。
どうしてこんなにも、胸の奥が痛むのだろう。
別に、嫌なことがあったわけでもない。
辛い出来事が続いているわけでもない。
本当に、ただ普通の日々を過ごしているだけなのに。
何が寂しいのか、自分でも分からない。
そんなことを考えていると、頬が濡れていることに気づいた。
あぁ……駄目だ。止まらない。
どうしよう、なんて慌てたその時、スマホが小さく揺れた。
もう、こんな時に何?
そう思いながら画面を見ると、そこには、
一人暮らしを始めてから会う頻度がすっかり減ってしまった母の名前。
電話に出ると、久しぶりに聞く母の声に、また涙が溢れた。
そんな私を察したのか、「大丈夫?」と心配されてしまう。
あぁ……安心する声だな。
そう思っているうちに、気づけば長い時間、話し込んでいた。
「そろそろ切るわね」
そう言われて、ふと、普段あまり電話をしてこない母が、このタイミングで連絡をくれたことが気になり、理由を聞いてみた。
すると母は、少し照れたように言った。
「なんとなく、久しぶりに声が聞きたくなったのと……一人暮らしで、そろそろ寂しくなってる頃かな、なんて思っただけよ」
あぁ……そうか。
きっと母は、どこの誰よりも、私のことを分かっているんだ。
電話を切ったあと、しみじみと思う。
きっと、いつになっても――
「この人には、敵わない」
他の誰かと比べる必要なんてない。
ただオレたちが出逢って、相棒になって、それだけで十分だ。
………なんて言うと思ったか!!!!
オレは「この世界で一番強くなる」男だ!!!!
生まれつき他人と比べる性分なんだよォ!!!
覚えとけ!!!!!!
お前を一番好きなのはオレだぁぁぁ!!!!
ハーーッッハッハァ!!!!!!!
「…何を分かりきったことを」
「さーせん」
【誰よりも】
小さいけど、聞こえる。
そう。いくら聞こえていたって、誰かが行動して、そして実行できなければ、その悲痛な声は、誰にも届いていないのと同じなのだ。
繰り返される悪夢のような時間。
自分の無力さに対する絶望。
繰り返される現実の狭間で、時折、全てが壊れる幸せな夢を見る。
深い眠りをここでした事がないのだと、振り返れるようになって、やっと気付いた。
助けてあげたかった。でも、自分もそちら側だった。
行動は禁止され、通り過ぎた時は、唯々虚しく…
君を助けたいのだと言う悲痛な声すら届かない君に、共感めいたものを感じた。
彼は、どうなったのだろうか。
君は知らないだろう存在に言われても、何にもならないのだろうけれど
あんなにも傷付いた君よ
誰よりも
幸せになるべきだと祈っていた
その謎のこだわりがよかったのかもしれない
恋人時代はいつも何を考えてるのか分からなかった。
いつもどこか遠くをみていて目は合わないのに、私が一歩下がろうとすると背中に手を添えてくる。
適当に相槌を打って気の無い返事ばかりするくせに、私が何か言いかけて口を噤むと、もっと話せ、と言う。
いつもどこか優しさを発揮するタイミングが噛み合わない気がして、好きなんだけどそうじゃないみたいなモヤモヤとした気持ちがあった。
お揃いの指輪をつけるようになって、少しだけ見え方が変わった。
手を繋ぐとき、指輪をはめている手で繋いでくるようになったのだ。以前とは反対の立ち位置に首を傾げるばかりだったのだが、ふと彼の顔を見上げてみた。
だらしなく口元が緩んでいて、目が合った瞬間にバッと勢いよく顔をそらされた。手を離そうとするのを力を込めて引き止めて声を出して笑ってしまった。
今まで必死に隠していただけだったのかと、自惚れていいのかと、色んな気持ちが溢れていく。
「好きだな、そういうとこ」
【題:誰よりも】
誰よりも
誰よりも綺麗な世界をみたい
誰よりも綺麗な音を聞いていたい
誰よりも綺麗な香りを嗅いでいたい
?
誰よりも?
誰よりも綺麗な世界を、知っている
誰よりも綺麗な音を、知っている
誰よりも綺麗な香りを、知っている
だからわたしは言葉を紡ぐ
第一に
素直でいること
正直者でいなくとも 皮膚呼吸に頼ること
第二に
ひろがりを考えること
浅い波の底に立ち 倒れるように沈むこと
第三は
なんだっていい
第一を覆したとしても 第二を怠ったとしても
いちばん上にあるものが
いちばん下より優れているとは
限らないんだ
八の字書いて
始まりなく 終わりをつけず
すべては循環しているもの
誰かがなにかを創り出し 何かがだれかを創り出す
せかいはめぐるものだもの
第一に だれよりもあなたでいること
【誰よりも】
目を開けると、目の前に黒の大きな毛玉があった。
そっと手を伸ばし触れてみる。固めの毛の感触とじんわりとした温もりに惹かれ、そのまま顔を埋めた。
温かい。陽の匂いがして、深く吸い込んでみる。遠い昔、自由に野を駆けていた記憶が巡り、懐かしさに吐息を溢した。
「なんだ、まだ朝は先だぞ。もう少し眠ってろ」
もぞりと毛玉が動き、黒い狐がこちらを向く。眠そうに欠伸をして、それにつられて同じように欠伸が漏れた。
まだ朝は先なのか。窓のないこの部屋では外の様子は分からない。だが彼が言うのだから間違いはないと、小さく丸まり目を閉じた。
「今日は冷えるな。こっちに来い」
そう言いながら抱き込まれ、瞬きの間に彼の腕の中にいた。一瞬のことに驚くものの、暖かさにすぐに瞼が落ちてしまう。
まだ朝ではない。ならば、彼が言うようにもう一度眠ってしまってもいいのだろう。
途端に意識が微睡むが、物足りなさに気づいて瞼をこじ開けた。
暗い室内を見回す。彼と自分以外に気配はない。
もう一匹、白い狐はどこにいるのだろう。
不安が込み上げ体を起こそうとするも、抑え込まれて起き上がることができない。
「こら、起きるな」
「だって」
「あいつなら、朝飯を狩りに行ってる。戻ってきた時におまえが起きてると怒られるのはおれなんだ。おとなしく寝てろ」
ぶっきらぼうな言葉だが抱き込む力も、宥めるような毛繕いの仕草も優しい。
彼は昔からそうだった。冷たく見えて、実は誰よりも優しい狐。領地争いをしていた時から、きっと変わっていない。
促されて、おとなしく目を閉じる。温もりに包まれてすぐに意識は夢の中へと落ちていった。
吹き抜ける風の匂いを感じ、目を開けた。
見上げる空は快晴。どこまでも続く草原を、柔らかな風が駆け抜けていく。
風に乗って、微かに花の匂いを感じた。誘われるように前足を踏み出し、風を追って駆け出す。
体が軽い。今ならばどこまでも行けそうで、次第に速度が上がっていく。力強く後ろ足で地を蹴れば、空も飛べそうな気がして高く鳴いた。
空を飛ぶ自分を想像する。そうすれば自分の姿が揺らぎ、三色の羽を持つ鳥に代わっていく。大きく翼を広げ陽を目指して飛べば、たちまち草原が遠くなる。
今の自分は誰よりも自由だ。好きな所に行き、好きなことができる。人間も妖も関係なく、ただ自分としてここに在る。
ふと見下ろせば、かつての自分の領地が見えた。のどかに行きかう人々に、ほんの僅か、悪戯心が芽生えた。
また観音菩薩となってみようか。そうしたら人間はどんな反応を見せてくれるのだろうか。
けれどそれもすぐに消え、領地の先、彼らとの約束の場所へと大きく羽ばたいた。
小さく見える二匹の狐の姿。白い三本の尾を持つ狐と、黒い尾のない狐。誰よりも優しく、誰よりも心配性な二匹の元へと、さらに速度を上げて向かっていく。
姿が揺らぎ、元の狐に戻る。後ろ足の感覚はない。このまま落ちれば二度と草原を駆け抜けることはないのだろう。
それでも構わなかった。自由な一匹で在るよりも、不自由でも二匹と一人でいたい。
二匹の腕の中へと落ちていく。再び姿が揺らぎ、今の自分に戻って強く二匹にしがみついた。
「おかえり」
二匹が笑う。頭を撫でるその手に擦り寄り、同じように笑顔を浮かべる。
「ただいま!」
今の自分は、きっと誰よりも幸せだった。
柔らかな日差しに、目が覚めた。
「あぁ、起きたんだ。おはよう」
気づけば、人間の姿を取った白い狐の腕に抱きかかえられていた。どこかに向かっているのか、ゆったりとした歩みに合わせ、心地の良い振動が伝わってくる。
まだ重い瞼を開け、目を瞬く。視線を巡らせれば、隣にいた同じように人間の姿を取った黒い狐と目が合った。
「ようやく起きたか。いい夢でも見てたみたいだな。ふにゃふにゃ笑って、涎まで垂らしてたぞ」
「どんな夢を見てたんだい?」
問われて、夢の内容を思い出す。
懐かしい夢を見ていた。彼らと同じ、妖だった頃の自由な過去の名残。
懐かしくはあるけれども未練はない。こうして人間として不自由に生きていくことに、幸せすら感じるのだから。
「お前たちが誰よりも優しくて、心配性だった夢、かな」
「なんじゃそりゃ」
「人間を化かして饅頭を貰わなくても、ここにいるだけで美味い菓子が出てくるってことだ」
眉を寄せる黒い狐に小さく声を上げて笑う。そんな自分を見て、白い狐は呆れたように息を吐いた。
「誰よりも優しくて心配性なのは、お前だろう?でなければ、俺は退治されたお前をこうして別の形で留めようとは思わなかったよ」
「そうだよな。おせっかいで、悪戯好きで、誰よりも寂しがりの食いしん坊だったから、離れていくのは惜しいと思ったんだ」
好き勝手に言う二匹から視線を逸らす。文句の一つでも言いたいが、それより赤くなっているだろう顔を見られたくはなかった。
しばらくして、目的地に着いたのだろう。そっと体を下ろされる。周りを見れば、どこか懐かしい景色が広がっていた。
「今日は暖かいからね。たまには外で朝食にしようかと思って」
広げた敷物の上に、手際よく二匹が準備を整えていく。少し歪な握り飯は黒い狐が握ったのだろうか。そんなことを思いながら、差し出された湯呑みに大人しく口をつけた。
「さて、準備もできたことだし食べようか」
いただきます、の声で、それぞれ食べ始める。
「――美味い」
「だろ。おれが握ったんだから当然だな」
黒い狐が胸を張る。それに適当に頷いて答えながら、白い狐がほぐした魚の身を口にする。相変わらず過保護だが、今更何かを言うことはしない。
ふと、柔らかな風が吹き抜けた。顔を上げれば、雲ひとつない晴天が広がっている。
あぁ、そういえば。夢で見た空も同じだったと思い出した。
「どうしたの?」
「鳥に化けて飛んだ夢の空は、どうやらここだったらしい」
目を細め、笑みを浮かべた。
やはり自分にはこの空よりも、二匹の側の方が向いている。
そんなことを思っていれば、急に黒い狐に抱えられ膝に乗せられた。手には新しい握り飯を渡され、腹を抱えられる。
「黒羽《くろは》?」
名を呼ぶが、答えはない。仕方なしに握り飯に齧り付き、文句と共に飲み込んだ。
「白花《しらはな》?」
「それじゃあ、他のおかずに手が伸びないからね。特別だよ」
そう言いながら、白い狐は魚の身を箸で目の前に運んだ。食べさせられることに、流石に何か言わなければと口を開くが、その前に口の中に魚を入れられてしまう。
眉を寄せながら、咀嚼する。二匹の狐を交互に見て、込み上げる不満はするすると萎んでいった。
「誰よりも寂しがりなのは、お前たちもじゃあないか」
笑うのに失敗して泣きそうに歪んだ顔。呆れたような、それでいて泣きたいほどに嬉しいような気持ちに胸が苦しくなる。
誤魔化すように握り飯に齧り付く。口元に運ばれる魚や野菜を受け入れ、腹を満たしていく。
結局、自分たちは似た者同士なのだろう。込み上げる笑いを噛み殺し、差し出された茶を啜った。
二匹の側は心地が良い。
食事が終わり、微睡む意識の中思う。
だが、もう少しだけ何も語らないでおこう。自分の何気ない言葉で一喜一憂する二匹を見ているのも悪くない。
人間を揶揄っていた時よりよほど楽しいことだと、二匹に囲まれ寄り添いながら穏やかに眠りについた。
20260216 『誰よりも』
誰よりも良い成績が取りたい
誰よりも優秀でありたい
誰よりも人に慕われたい
誰よりも生きれるように
誰よりも強く願います
誰よりも幸せでありたいから
題名:誰よりも
誰よりも。
「誰よりも彼のこと好きな自信がある。」
「誰よりも美術を愛してる自信がある。」
「誰よりも人に尽くしている自信がある。」
「誰よりも好きなことに熱心な自信がある。」
「誰よりも一途な自信がある。」
どれもホント。
本当に思ってる。
でも………実際は?
彼のこと好きな人なんて山ほどいるのに
なんでそんなに自信が持てるの?
自分より絵を描き続けてる人なんて山ほどいるのに
なんでそんなに自信が持てるの?
自分はそもそもそんなに優しくない人間なのに
なんでそんなに自信が持てるの?笑
自分が1番好きなことがもっと好きな人なんて
山ほど居るんだって!!!!!
本当に、、一途、なの?
誰よりもなんてないくせに…
多分この世の中じゃ、誰も誰にも追いつけない。
誰よりもなんて自信を持ったところで終わりなんだなって
最近よく感じます。
誰よりも
君は輝いていた
そう....
カガヤイテ、イテイタンダヨ....
【お題:誰よりも】
“誰よりも!”と言えることがあるだろうかたとえば君のことであるとか
#誰よりも
誰よりも
誰よりも、キミのことが大好きだと自負している。
なのにキミは、温かくなる時期にはいなくなってしまう。
僕は1年中、キミと会いたいし、キミのぬくもりを感じていたい。
なのにキミは、いつの間にか、何も告げずにいなくなってしまう。
「ああ、また寒い時期まで会えないのか」
僕は大好きなキミ…コーンポタージュ缶が自販機から無くなったのを確認し、残念に思いながらその場を後にするのだった。
誰よりも、愛してる
愛してるの
なのにどうして、認めてくれないの?
私の愛は本物だよ?
嘘つきだって?
そんなことない
だって愛してるから
だからこうするんだよ
なんで「嘘だ」って言うの
なんで「嫌だ」って言うの
なんで「怖い」って言うの
どうして
どうして
どうして
どうして
ねぇ、なんで
誰よりも愛してるから
こうするの
ねぇ、なんで何も言わないの
ねぇ、なんで動かないの
ねぇ、なんで
なんでなの?
【誰よりも】
あなたと抱き合って、あなたの体温で眠って、最後には全部腹に収めてしまいたい。
お題:誰よりも
窓を開けると風が吹き抜けた
反対側の窓も開けようと振り返ると空っぽになったベッドがひとつ目に入る
“受け入れられない”
“現実を突きつけられるから”
毎日もう居ないはずの君を見ているのが辛くなってあの日全て片付けてしまった君の荷物
そこは初めから誰もいなかったようになった
同時に君がここに存在した痕跡も全て無くなってしまった
それからずっと自分の手で君を二度失ったような感覚に苛まれ続けてる
自分勝手だと思う、自分勝手に後悔してるんだ
ごめん、本当にごめん
空のベッドをしばらく眺めてひとつ息をつく
風が通るようにそのベッドの近くの窓を開いた
“………!”
ふと、名前を呼ばれた気がした
#誰よりも 近くで
"誰よりも"
磨かれた石でしたって種明かし
強い光は眩みやすいね
どんな状況でも、どんな状態でも舞えればそれでいいと思っていた。
「おまえは芸と命、どちらを選ぶ?」
その昔、そう問われたとき迷う事なく芸を選んだ。
でも旦那と出逢ってしまってからはそれが正しいのか分からなくなった。
命がなくなってしまったら旦那の前で2度と踊れまい。
それは嫌だいやだ。
命あれども2度と踊るなと言われると舞わないわたしに旦那は興味を持ち続けてくれるだろうか。
考えたくもない。
舞台の上に立ち回り演じ舞う。
それが生涯の願い。
それは今でも変わらない。
それでも、
わたしが何よりも望むのは。
旦那にわたしの演じる姿を見てもらう事。
わたしが妖艶に舞台で何者かになり得るその姿の視線の先にはあなたに居てほしい。
その頬に満足そうな笑みを浮かべ笑って褒めてほしい。
わたしは誰よりも旦那に見て欲しいんだ。
そのために視線の角度そのしぐさ指の先まで貴方の求める貴方を惹きつけられるその舞いを共に離れるその日まで舞い続ける。そう決めた。
誰よりも誰よりも貴方に。
その心にわたしのその姿を置いてて欲しいんだ。
🍁(誰よりも)
「誰よりも」
親が子を愛し、子が親を愛す。
世界の常識として語られている。
子供が出来たら、その瞬間から親になる。
大人という型から外れ、親という型にはまるのだ。
子はいつしか大きくなり、成長する。
その成長のスピードは驚くほど早い、しかしその過程は苦痛と困難の連続だ。
人生は「山あり谷あり」と言うが、実際は「山」などなく、殆どちいさな「坂」だ。登ればまたすぐに落ちる。
それを繰り返して人はいつしか大人になる。
それは突然で唐突だ。
手本なんてない、練習すらない。予告すらないのだ。
ある日突然、「お前はもう子供じゃない」と宣言されるのはある種の罰のように思える。
親もそうだったのに、何も知らぬ子供はそうかんがえる。
そしてこの子供は大人になるのだ。
あぁ、あっという間だったなと他人事のように言うのだ。
大人になると人間は子供の頃の自分とは別人になる。
そして、大人が親になると、またこれの繰り返しだ。
一定のリズムで繰り返されるこれは、世界の常識として覆ることはない。なかったのだ、今までは。
このリズムが崩れ始めたのだ。
女と男が愛し合うという常識や、親子の愛し愛されの関係から抜け出し始めたのだ。
それが幸福なのか、はたまた不幸なのかは定かではない。その正確な数値を求めるには、我々は遅かったのだ。
自由を求めるには不自由という足枷をつけられる。
差別、迫害、偏見、それらの妨げを耐え続けた者にのみ自由は与えられる。
◇◇◇
「というのを、本で読んだんだ。どう思う?」
コイツはいつもこうだ。急に押しかけて来て、茶を要求して何時間も居座る。「帰れ」と言っても聞かない。
「子供か」と嫌味ったらしく言えば、目を丸くしたかと思えばフッと笑う。
凄い腹が立つ。殴るぞ。
「どう、とは?というか、来るなら言えと何回言えばお前は分かってくれるんだ?」
「まぁ、もういいだろ。お前も慣れたろ?」
ぶん殴ったろかコイツ。
そんなことを思いながら、インスタントコーヒーを入れたカップの中にお湯を注ぐ。湯気がゆらゆらと立つのを見ながら、ふと考えてみた。
「常識だ、なんだ、随分気難しそうな作者じゃないか。そんなのに囚われるから、文字書きは早死するんじゃないか?論文書いてみようかな」
そう言いながら突然の来客者にコーヒーを渡す。
「相変わらず変な着眼点だなぁ」
眉を上げてコーヒーをすする。アチッと言って口を押さえた。火傷したか。ざまぁみろ。
「じゃ、お前は『常識』から抜け出すことが幸せだと思うのか?」
口を押えたまま、話を続ける気のある彼を見る。
真剣さはなく、ただの雑談らしい。良かった、今日はもう頭を使いたくないんだ。疲れてるから。
「別に、そういう訳で言ったわけじゃない。
ただ、世の中の常識と規則を一緒くたに考えるのはあまりよくないと言っただけだ。」
「『常識』と『規則』を?似たようなものだと私は思うけど。まぁ、確かにそうかもしれないな。」
「そうだろ?
例えば、人を殺すことは常識からも規則からも逸脱している。だが、仮にその殺人者にやむを得ない事情があったらどうなる?親を殺されたとかかな。
常識は人の心で何にでも姿を変えるんだ。」
「規則は心のないロボットだって例えるんだろ?」
「そうだが?」
「やった、当たった」
「子供か」
「大人だよ」
「見れば分かるよ」
「で、結局、この本の感想は?」
「“頭の固い人間が世界を語るべからず”」
「その通り過ぎて私何も言えない」
「じゃさっさと帰れ。私も忙しいんだよ」
誰よりも貴方のことを知ってるなんて言えない。
わかった気になってるだけかもしれないからね
《誰よりも》