27(ツナ)

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12/25/2025, 3:57:48 AM

遠い日のぬくもり

ツインレイ。私と彼はきっと前世でひとつの魂だったんだ。
出会ったのは本当に偶然で初対面の時に懐かしい感覚になって、つい無意識に「久しぶり」と声をかけてしまった。
けど、今思うと必然だったのかななんて思う。

誕生日が近くて、好きな食べ物も好きなことも好みが似ていて、嫌いなものも似てる。
嘘をつくと右耳の後ろを触る、その癖も一緒。
怖いくらいそっくりだった。

でも、1番の感覚は触れた手の温もりだった。
彼の手に触れた瞬間、
「あ、私(俺)とこの人(この子)は昔、ひとつだった。」
そう、お互いの手と手から伝わった。

12/23/2025, 10:55:57 AM

揺れるキャンドル

思い立って、夜の街に出た。
真っ暗で体の芯から冷えるような寒さの夜。
雪はまだ降っていない、けれど、もうじき降るだろう。

商店街に着くと、イベントブースでキャンドルナイトはやっていた。
周りはカップルや家族だらけで少し肩身が狭かったが、そんなのどうでもよくなるくらい、無数のキャンドルが揺蕩う光景は圧巻だった。
しばらく楽しんで帰ろうとしたとき、ちょうど空から雪が降ってきた。
「……あぁ雪。きれい、だけど…寒い。」
「やっぱ降ってきたかぁ。…さみ〜。」
お互いの独り言が聞こえて、目を見合わせた。
「あはっ、雪、降ってきちゃいましたね。寒いっすねぇ。……あ〜、あの。良かったら、もう少しキャンドル見ていきません?」
気さくに話しかけてくれた彼に最初は警戒したものの嫌な気はしなかったから、私は「はい。」と頷いた。

12/22/2025, 12:31:02 PM

光の回廊

それは失くしたものだけを照らす道。
手を伸ばしても届かない数多の思い出が、淡く光って並んでいる。
笑った顔と声、触れられなかった手、伝えることができなかった感情。
進む度に胸は硝子片が刺さるようにチクチク痛む。足は前へ前へ進みつづけ、立ち止まることは許されない。
この回廊の出口の先に待つのはきっと再会なんかじゃない。
そんなこと、わかっている。
それでも私は、光の中を歩き続けた。
歩き続けた先には、きっと新しい出会いが待ってるから。

12/21/2025, 10:27:57 AM

降り積もる想い

雪が降り積もるのを窓辺から見ていた。
色のあった景色が白一色に染められていく。
私の想いもこんな風にどんどん降り注いでは、あてもなく積もっていくだけ。

積もったあと雪は太陽が現れて溶けてなくなっていく、じゃあ、私のこの想いは?いつまでも降り積もったらどうなっちゃうのかな?

「あなたが好き。」文字にするとなんて事ない短い言葉だけど、口に出すのは難しい。
けど、いつまでも募らせてるだけじゃ、この気持ちにずっと雪解けは来ない。
太陽が雪を照らす頃、私もこの積もらせた想いに決着をつけよう。

12/21/2025, 1:54:20 AM

時を結ぶリボン

近所を散歩していると『喫茶リボン』と書かれた喫茶店を見つけた。前からこんな所にあったっけ?
可愛らしい店名に反して見るからに古そうな店構えに無意識に足が向いて、店の扉を開けてみる。
中にはマスターがひとり。
「…いらっしゃいませ。」
「あ、えっと、まだ始まってなかったですか?」
薄暗くて伽藍どうとした店内の様子につい尻込みしてしまった。
「やってますよ。…どうぞ。」
スッとカウンターへ案内されると、マスターがトレーに乗ったカラフルなリボンをわたしの目の前に置いた。
「これ、は?」
「どうぞ好きな年代をお選びください。」
年代?リボンをよく見るとそれぞれ『70年代』『80年代』『90年代』『2000年代』『2010年代』と刺繍がされていた。
意味はわからなかったけれど、試しに80年代と刺繍されたリボンを取る。

その瞬間、プツンと意識が一瞬切れて再び目を覚ますと、同じ喫茶店の同じカウンターに座っていた。いつの間にか店内は賑わっていて、見渡すとなんだか古い、よくテレビで見るような昭和レトロな風貌の人たちでひしめき合っていた。
変わらないのはマスターだけで思わず声を掛けた。
「あ、あの!さっき、このリボンを取ったらなんか気を失ってしまったみたいで。えっと、なんか、さっきとお店の様子が違くて。」
「先ほどお客様に選んでいただいたリボンは"時を結ぶリボン"この喫茶店の過去へタイムスリップできるものです。リボンを手にしている間のみ、お客様が選んだ時代の喫茶店へタイムスリップできます。」
あまりに突拍子もなくて、理解が追いつかないわたしは思わず笑い出した。
「また来ます。」
「ご来店お待ちしております。」

それがわたしとマスターの最後の会話だった。
『喫茶リボン』跡形も無くなってしまった、あの不思議な喫茶店。わたしは今も探し続けている。

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